119話▽変化の時 ページ23
「それじゃあおれは失礼しよう」
ペロス様宅でのおやつの時間も終わり、客人のスナック様は席を立つ。
「気をつけて帰れよ。ペロリン♪」
「あァ。
Aも、色々世話になったな」
『いえいえ』
彼は今年の春に受けた傷が、ようやく完治したそうだ。
今は12月中旬。
治癒に半年以上もかかったのだから余程傷が深かったのだろう。
ドアが閉まったのを確認して、ペロス様は徐に口を開いた。
「アイツとこうしてゆっくり話すのも久しぶりだった」
『相変わらず大臣のお仕事は忙しそうですしねぇ』
「……お前が彼に、進言したんだろう」
自分は思わず表情筋が緩みそうになる。
『何のことで？』
「とぼける気か。
スナックはお前に言われ、考えを改めたと言っていたぞ」
『……決断を下したのは彼です。
自分は何もしていませんよ』
スナック様は前に言っていたのだ。
彼が実は"将星"という称号を重荷に感じていたこと。
自分はそんな彼に、言葉を投げかけた。
"ずっと足枷だったんでしょ"
"外しちゃうのもアリだと思いますけど"
思い返せば随分偉そうなことを言ったと思う。
だって自分にはそんなこと、できる勇気はないから。
(足枷を外したのは、彼自身だから)
「不思議なヤツだ」
『……』
「お前が来てから状況が目まぐるしく変わる。
家族の態度や雰囲気も前とは大違いだ」
『……影響力デカいもんで』
「くくく、流石は芸人」
ペロス様は静かに笑う。
相手を安心させるような声。
弟や妹が多いせいか。人の扱いに慣れている様に感じる。
「お前も変わり時なんじゃないか？」
『！』
「敵が何なのか知らねェが……ウチはビッグ・マム海賊団。
何を恐れる必要がある？」
分からない。今の自分の表情が。
分からないけど……とにかく誰にも見せたくない。
そう思って自分は顔を伏せていた。
分かっている。変わるべきなのは。
分かっているけど……どうしても前に踏み出せない。
臆病な自分は、全てを人のせいにしていた。
「A」
自分の肩に、華奢ながらも大きな手を置かれる。
そしてもう片方の手が自分の顎に添えられ、そのまま上を向かされて──……
『むぐ』
「苦い飴なんておれの信条に反するが。
……お前は本当に不思議なヤツだな？ペロリン♪」
口に入れられたのは、コーヒー味のロリポップキャンディ。
甘味はない。本当にブラックコーヒーを飲んでいるような味だ。
ペロス様は"仕事再開だ"と言って部屋を出ていく。
そんな彼の背を数秒ほど見つめ……自分も慌てて立ち上がり、後を追った。
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なめこ(プロフ) - 万さん» 万様、温かいコメントをありがとうございます！駄洒落は割と丁寧に作ってたのでそう言って頂けると嬉しいです。引き続きマイペースで頑張っていきます！ (2022年9月30日 19時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 初めまして、設定も珍しく内容もとっても面白かったので一気に読んでしまいました！！主人公の駄洒落もついつい楽しみにしている自分がいました！今後も応援しています。 (2022年9月30日 0時) (レス) @page50 id: b14a1161fa (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» 橋本アリィちゃん様、感想ありがとうございます！また返信遅くなり申し訳ございません。今後もマイペースに作品更新していくので、よろしくお願いします！最後までのご清覧、本当にありがとうございました！ (2022年9月10日 13時) (レス) @page19 id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても良いお話でした！今後も頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年1月5日 11時) (レス) @page50 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 烏羽Pさん» 鳥羽P様、ありがとうございます！この作品で少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。今後も自分のペースで作品投稿を続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。改めまして、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 13時) (レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年10月30日 18時
