110話▼伝えたい言葉 ページ14
▼カタクリ視点
「やァ！"
今回のお茶会で、この場面を目にするのは何度目であろうか。
『どうも』
「会えて光栄だ。
どうだい？向こうで話でも──……」
今日のAはいつもと違う。
彼女が会場入りした時から、おれの目はAに奪われていた。
「カタクリ」
「……」
「おい」
「！
……何だ」
ダイフクとオーブンの呼びかけに慌てて反応する。
Aは丈の短い、肩出しの赤いドレスを着ていた。
妹達が選んだそうだが、普段露出の少ない彼女にしては……割と攻めた服だ。
そのせいか、Aはいつも以上に客人に声をかけられている。
「Aか」
「……」
「アイツ、ああいうのも似合うんだなァ」
両脇でニヤニヤと笑う兄弟を無視する。
おれはAが好きだ。
だが彼女にアプローチするのも、プライドが邪魔をして実行に移せずにいた。
「良いのか？カタクリ」
「客だけじゃねェ。
おれ達家族にも……狙ってるヤツはいると思うぜ？」
"何ならおれが貰っちまうか"とからかうダイフクを小突くが、おれは何も言い返せない。
その時。おれの頭に"未来"がよぎる。
さっきの男が会場の端で──その欲に塗れた手で、彼女に馴れ馴れしく触れる未来。
近くのテーブルにあった
Aは……そんなこともつゆ知らず、ソイツと談笑していた。
男の手が彼女の腰へ伸びる。
おれはそこを目がけてビーンズを投げた。
ビュ……ドォッ！！！
『！』
「ヒ！？」
ヤツの手スレスレを抜けて、壁にめり込むビーンズ。
擦りはしなかったはずだが……その音と風圧のせいか、男は震えながら伸ばしていた腕を引っ込めた。
「……すまない。手癖が酷くてな」
「あ、いや」
おれが歩み寄ると、男は逃げ出した。
……フン。とんだ意気地なしめ。
「お前よォ」
「一応客人だぞ」
「怪我はさせていない」
『いや自分もビビりましたが？』
ダイフクやオーブンに窘められるが、その口調はどこか愉快そうだった。
そして格好こそいつもと違うが、話せば普段と変わらないAがそこにいて。
おれは彼女を見つめ、ゆっくり口を開く。
「似合っている」
おれの言葉が心底意外だったのか、Aは目を大きく開いた。
その瞳は……本当に宝石のようで。
『ありがとうございます』
──細められてもなお、それは美しかった。
「「カタクリィ〜」」
「殴るぞ」
『ちょ、暴れんでください！？お茶会中なんだから』
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なめこ(プロフ) - 万さん» 万様、温かいコメントをありがとうございます！駄洒落は割と丁寧に作ってたのでそう言って頂けると嬉しいです。引き続きマイペースで頑張っていきます！ (2022年9月30日 19時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 初めまして、設定も珍しく内容もとっても面白かったので一気に読んでしまいました！！主人公の駄洒落もついつい楽しみにしている自分がいました！今後も応援しています。 (2022年9月30日 0時) (レス) @page50 id: b14a1161fa (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» 橋本アリィちゃん様、感想ありがとうございます！また返信遅くなり申し訳ございません。今後もマイペースに作品更新していくので、よろしくお願いします！最後までのご清覧、本当にありがとうございました！ (2022年9月10日 13時) (レス) @page19 id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても良いお話でした！今後も頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年1月5日 11時) (レス) @page50 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 烏羽Pさん» 鳥羽P様、ありがとうございます！この作品で少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。今後も自分のペースで作品投稿を続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。改めまして、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 13時) (レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年10月30日 18時
