46話▼元気を出して ページ48
▼ギャサリン視点
「"正義"が何か？」
目の前の友人、Aはさっきから元気がなさそうだ。
いつもはすぐに手を付けるスコーンにも未だ手を伸ばしていない。
『……私、分かんなくなっちゃったんだ。
小さい頃から、ただ何となく正義ってものに憧れてて』
いつもは輝いている瞳にも、今日は影がかかっている。
……これは何かあったわね。
CP9の方々、態度とかちょっとキツそうだもの。
あのポンコツな"指令長官"にでも言われたのかしら？
「正義、ね……難しい質問だわ」
『こんな……こんな生半可な姿勢で働くの、CP9の方々にも失礼だよね……』
すっかり自信を無くしてしまっている様子。
でも……私は十分彼女に感心してるけど。
だってそうじゃない？
「A、いきなりこんな職場に飛ばされてしまったでしょう？
なのに他人のことまで考えられるのはすごいことだと思うわよ」
『……ギャサリン』
「それにここに来る前も、来た後だって。
あなたは自分の命を犠牲にしてでも、周りの人達を助けてきたじゃない！
それって生半可な姿勢なんかじゃできないわ」
見ず知らずの人のために命を懸ける。
私だって大層な志は持ち合わせていないけれど……それを"正義の味方"と呼ばずして何と言うのだろうか。
誰にだって出来ることじゃない。
『……ギャサリンはさ、何でここで働こうと思ったの？
あ、答えづらかったらごめん……！』
「うふふ、そんな気を使わなくて良いから！
私はね、そもそも
"え、本当！？"と驚いた顔をするA。
私はその反応がどこか面白くて、どんどん話を続けていく。
「両親はここの給仕でね。いわゆる職場内恋愛ってヤツよ。
だから私はそのままエニエスロビーで働いてた」
『……そうなんだ』
「だからね、A。
どんな思いでも……何かのために働こうって思える人、私は尊敬するわ」
私はAの頭をヨシヨシと撫でると、彼女は涙と共に堪えていたような笑みをこぼした。
それを見て私も笑ってしまう。
「元気出た？」
『……うん、ありがとギャサリン』
「まーったく、Aは考えすぎなのよ！
"正義"なんて哲学チックなもの、生きている間に見つかれば良い方なんじゃない？」
潤んだエメラルドグリーンの瞳には、いつもの光が戻っていて。
取り敢えず調子が直ったようで何よりね。
Aの元気なお腹の音が、午後のティータイムの始まりを告げた。
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なめこ(プロフ) - I r°さん» ありがとうございます！これからも自分のペースで更新頑張らせていただきます！ (2020年12月6日 10時) (
レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
I r°(プロフ) - すごく好きです！これからも頑張ってください！！ (2020年12月5日 15時) (レス) id: e50f3d6e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年11月12日 21時
