45話▽翳りゆく先 ページ47
7月に入ったエニエスロビーは、相変わらず日が長い。
それも当然だ、ここは不夜島。
1日中日が照っている日常にもだいぶ慣れてしまった。
「……ポ……」
『あ、ハットリちゃん』
スパンダム長官のいない指令室は、最近常にCP9の方々の溜まり場になっている。
……長官、やはり避けられてる？
そんなワケで今日はハットリちゃんが、長官のデスクの上で羽を広げて日光浴をしていた。
私は邪魔をしないよう、給仕室から持ってきたマグカップを静かに自分のデスクに置く。
(のんびりしてて良いなぁ、こういう……)
ホッと一息つこうとしたのも束の間、部屋に近づく
「……チッ」
『……お、お疲れ様です……』
ルッチさんは眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌そうな顔をしていた。
歩くたびに彼の長い髪が揺れて──……
『る、ルッチさん？
その髪……』
「……」
ルッチさんの髪が……肩上までに短くなっている。
昨日切ったのかな？丸1日会わなかったし……
『さ、散髪でも……？』
「貴様に言う筋合いはない」
よく見ると、彼のシャツから覗く腕にも包帯が巻かれている。
もしかして髪が短くなったのも、自分で
『大丈夫……ですか？』
「！」
『す、すみません！適当なこと言ってしまって。
痛くないですか？傷……』
私が彼の腕に目を向けながらそう言うと、ルッチさんはより一層顔を歪ませた。
「やめろ気色悪ィ」
『！』
「満足か？気分が良いか？
貴様の"正義ごっこ"におれを巻き込むな。反吐が出る」
ピシリ。
心にヒビが入る音がした。
正義ごっこ。
傍から見ればそんな風に思われてたんだ。
(そっか)
それもそうか。
だって"正義"の名の下に任務をこなし、傷つき傷つけられてるのはいつだって彼等。
私は……何にもしてない。
(何がしたいんだろう、私)
私の中で"光"が揺らぎ、それは小さく灯る蝋燭の炎のように……危うく消え去ろうとする勢いで。
焦点が合わず、どこかをぼうっと見つめることしかできない私の横をルッチさんは素通りした。
「ハットリ、部屋に戻るぞ」
「……ポー」
ハットリちゃんを優しい手つきで肩に乗せ、彼はさっさと部屋を出てしまった。
秒針の音が響き渡る。
私は無意識にマグカップに手を伸ばすと、その冷たさに一瞬手を引っ込めた。
『……冷めちゃったな』
それでも入れ直す気にはなれず、私は冷えきったソレを喉に流し込む。
体の芯から、じんわり冷たさが広がっていった。
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なめこ(プロフ) - I r°さん» ありがとうございます！これからも自分のペースで更新頑張らせていただきます！ (2020年12月6日 10時) (
レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
I r°(プロフ) - すごく好きです！これからも頑張ってください！！ (2020年12月5日 15時) (レス) id: e50f3d6e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年11月12日 21時
