20話▽その男、取扱注意 ページ22
「おい」
ぶつけられたその短い言葉だけでも鳥肌が立つ。
私はすっかり
『──る、ルッチ、さん』
自分の声が震えているのが分かる。
お腹の辺りが冷えるような感覚と、嫌な汗が噴き出るような感じ。
怖い。
これはいつ殺されてもおかしくないという、"死"への恐怖だ。
『あ、あの……な、なんでしょう』
「……」
階段の踊り場で、私は彼が再び口を開くのを怯えながら待っていた。
「手を出せ」
『は』
「聞こえなかったか？」
『い、いやいやいや！出させていただきます』
不機嫌そうな声に、私は慌てて両手をお椀状にして差し出す。
何？何か渡されるの？
爆弾？毒入りの飴？何かの死骸？
ポトリ、と"何か"が手のひらに落とされる。
『……あ』
ヘアゴムだ。
前にハットリちゃんの足に巻いてあげた……今私が髪を結っているのと同じやつ。
まさか返されるとは思っていなかった！
『あ、りがとうございます』
「おれの手元に置いておきたくないものでな」
『ウッ……すみません』
つい謝っちゃったけど、これ私悪くないよね？
なんなんだ本当！ちょっと理不尽すぎないかこの人！
心の中でくらい、悪態ついたって良いよねもう！？
負の感情がごちゃ混ぜになっている時、どこからか小さな羽音が聞こえた。
「ポー」
『「！」』
ハットリちゃんは慣れたようにルッチさんの肩に留ま──……
「ポ」
『ん？
……わ、四つ葉のクローバー』
──る前に、私がまだ突き出していた両手に
四つ葉のクローバーって確か縁起が良いんだよね。
わざわざ探してきてくれたのかな！？
『ありがとう！大事にするね』
「ポー！」
「……義理堅いヤツめ」
ハットリちゃんは愛嬌があるし良い子だなぁ〜！
毛並みも綺麗だし、ちょっと撫でてみたいな……
ルッチさんはどこか気に入らないような顔をしているが、そんなの知らないもんねっ！
とにかく足は治ったみたいで良かった！
『あ、ヘアゴムありがとうございました。
それじゃあまた──……』
ズガン！！！
顔の真横で風が生まれる。
自分のすぐ後ろの壁から、パララと破片が落ちる音。
壁ドンならぬ、"壁指銃"。
殺気に満ちた顔が目前にあった。
「何が"また"だ。調子に乗るな」
『す、すみませんでしたッッ……』
……私がルッチさんに慣れる日、来るのかなぁ……
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なめこ(プロフ) - I r°さん» ありがとうございます！これからも自分のペースで更新頑張らせていただきます！ (2020年12月6日 10時) (
レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
I r°(プロフ) - すごく好きです！これからも頑張ってください！！ (2020年12月5日 15時) (レス) id: e50f3d6e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年11月12日 21時
