42話▽秘書官ですから ページ44
カツンカツン、と踵の高い靴が鳴る。
高いヒールを華麗に履きこなす彼女──カリファさんは、真っ直ぐこちらに向かってきた。
「長官は……留守のようね」
『はい。今日は海軍本部の方に用があるみたいで』
"報告書お預かりします"と手を差し出せば、彼女は"どうも"と表情を変えずに礼を言う。
『あ、そうでした。カリファさんにお渡ししたいものが……』
「私に？」
『少々お待ちを！』
そうそう、そう言えばカリファさんにお土産買ったんだ。
私は慌ててワークデスクの引き出しを開ける。
今は5月下旬。
彼女の誕生日、は1ヶ月前だけど……ちょっと遅れた誕生日プレゼントの意味合いも込めて！
「……これは」
『ルイボスティーです。この前長官と町のカフェで飲んだら美味しくって！
カリファさん、紅茶缶がお好きかと……』
味も長官のお墨付きだ。
お恥ずかしながら私は嗜好品の良し悪しがよく分からない。
なぜか外食の時は食べ方が綺麗なんだよね、長官。
テーブルマナーにも詳しいし。ちゃんとお坊ちゃまだ。
「……あなた、変わってるって言われない？」
『え？』
変わってる？私が？
あまりにも平凡すぎる村人Aみたいなこの私が？
『い、イヤイヤイヤ！当然言われたことないですよ！』
「……」
カリファさんは手にした紅茶缶をじっと見つめる。
お、お気に召さなかった？
やっぱりニワカが下手に手を出すもんじゃないのか紅茶の世界は……！
「初めてだわ」
『え？』
「好きな物を渡されるの。
……あなたみたいに、周りを気遣える人から」
彼女の口から発せられた言葉は、私の想定外のもので。
その意味を熟考するように、彼女の声が体の中でぐるぐる回る。
「私の父もCP9だったから……当然私もソレを目指すよう教育させられたわ。
"周りの人間を自分と同じだと思うな、エリートは馴れ合わず孤高に生きろ"と。
だからかしら……私には友人と呼べる人もいなかった」
寂しさを孕んだ声色に、私は自分が泣きそうになる。
何て強い人なんだろうな。
そして……彼等はなんて孤独な人達なんだろう。
「……困らせてごめんなさいね。今のは忘れて頂戴。
とにかくありがとう、大切に飲ませていただくわ」
『わ、私でよければ！全然話も聞きますから！』
「！」
『秘書官として！
CP9の方々をサポートするのが私の役目ですからッ！』
"気軽に頼ってください！"と半ば叫ぶようにそう言えば、カリファさんは静かに笑った。
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なめこ(プロフ) - I r°さん» ありがとうございます！これからも自分のペースで更新頑張らせていただきます！ (2020年12月6日 10時) (
レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
I r°(プロフ) - すごく好きです！これからも頑張ってください！！ (2020年12月5日 15時) (レス) id: e50f3d6e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年11月12日 21時
