135話▼再出発 ページ39
▼カリファ視点
電伝虫の通話を切った途端、歓声が上がる。
Aは生きていた。
その事実で、ここ数日の殺風景な記憶が色付くようで。
「あの男と一緒ということは……役人専用の療養所にでもいるんだろう」
「まさか本当に拾われておったとは！
政府の輩も、偶には役に立つものじゃ」
朗らかに笑う彼等を見て、私も思いがけず口元に弧を描く。
(随分と人間臭くなったものだわ)
今まで死神と宜しくやってきた私達が、まさか誰かの命を祈ることになるなんて。
……結局Aは堕ちることなく、最後の最後まで"光"であり続けたのだ。
私達の完敗ね。彼女がこうも一徹だとは思わなかった。
「それじゃあ次なる目的地は……その療養所ということか。チャパパ」
「よよいッ！
見舞いついでにィ〜"
「勿論だ。たっぷり世話になったしなァ？」
先程"ベリーグッド"と呼ばれた男──だった球体の数々を、地面に置く。
その周りにも気を失った兵士達がゴロゴロと。
……使えない部下達だけじゃ、寂しいかしら？
「……カリファ、その花は」
私はすぐ側に、小さな花を1輪挿した。
これはセント・ポプラで海賊を退治した礼として、町の少女から貰ったもの。
「船に花瓶はないでしょう？」
だから置いていくことにした。今の私達には必要ないと判断して。
目に見えなくても、香りがなくとも。
私達の中には既に"生きる理由"がある。
(……貰う資格も無いだろうし)
錨を上げて間もなく、再度船は果てしない海を進む。
「いやァ……やはり船は良いのう。あの海賊共には勿体ない代物じゃ」
「お前もガキのままだな」
「なんじゃルッチ！
そんなこと言うとる野暮天の前に、
"痛い痛い痛い！"と悲鳴を上げる末っ子気質の同僚に溜息を吐いた。
ルッチもこの様子なら、頭の包帯が取れるのも時間の問題。
それでも傷口が開いては困るのだから、もう少し安静にしていてほしいというのが本音だが。
「ちょっとルッチ、その辺にしときなさい」
「ま、全くじゃ……イテテ」
「アイツの父親はCP0総監だと聞く」
遠くを見据える彼の瞳は、海の彼方でも映しているのか。
ぼやきを無視されたカクだが、彼は彼で別に気にしていない様子。慣れとは実に恐ろしいものだ。
気付けば皆の目線が、静かにルッチの元へと集っていた。
「丁度良い。
──親子共々、
そして意地の悪い"提案"に賛同の意を込めて、私達も揃って含み笑いを返すのである。
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なめこ(プロフ) - 綺世さん» 綺世さん、コメントありがとうございます！ルッチの魅力を伝えるのが中々難しかったので、そう言っていただけて嬉しいです〜……！機会がありましたら、次作の際も宜しくお願いします！ (2023年3月4日 9時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 完結おめでとうございます！この作品に出会い、ルッチ推しになってしまいました。次作も楽しみにしています！執筆お疲れさまでした！ (2023年2月28日 14時) (レス) @page50 id: 782601e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - Jaさん» Jaさん、嬉しいお言葉ありがとうございます〜！長い作品なのにありがとうございます……笑 引き続き更新頑張って行きます！ (2023年2月1日 19時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
Ja - とても面白くて昨日から一気読みしました！！更新これからも頑張ってください！！ (2023年2月1日 9時) (レス) @page40 id: f8125b9f7e (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 酢さん» 酢さん、ありがとうございます……ご満足いただけたようで何よりです笑 CP9沼の民の妄想に、最後までお付き合いいただけますと幸いです！ (2023年1月22日 16時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2022年12月3日 15時
