123話▽"新時代" ページ27
世間一般的に、海賊は"悪"とされている。
何故なら略奪行為を平気で行い、気まぐれに命を奪い、人々の生活を脅かす存在だから。
つまり海賊を自称することにメリットはない。
世界中を旅したいだけならば、わざわざ髑髏の旗を掲げる必要など全くないのだ。
私は疑問に思った。
この男が、どんな理由で海賊を志したのか。
少しの毒気も感じさせない彼は、何を目的に海を行くのか。
「海賊王」
『……？』
「おれは海賊王になる。
海賊王になって……作るためだ。
──"新時代"を」
思わず息を呑んだ。
彼は戯けた様子も見せず、本気でそう言い放った。
私に笑われるかも知れないと、そんな可能性すらも視野に入れていないように。
──"ならば時代を変えてみろォ！！！"
『……私も』
「！」
『私も見たいな……"新時代"』
争いのない平和な時代。
出生や身分で生き方を決められずに、自ら選び進める時代。
自由に生き、満足に死を迎えられる時代。
(新時代、か)
「お前、名前は」
『……ルース・A』
「A……
お前……悪い奴じゃなさそうだな」
"そっちこそ"とは返してやらない。
……これが私の、せめてもの
目前の軍艦からアナウンスが聞こえる。
砲撃のカウントダウンが始まろうとしているようだ。
私もルッチさんを守らないと。
『……次会ったその時は。私があなた方を裁きます』
「？
……おわッ」
麦わらの下から無数の
腕はそのまま彼を転がし、海へと運び出そうとしていた。
その能力は、ロビンさんのもの。
……なんとまぁ、物の見事に奪還されてしまったワケだ。
私は残る力を振り絞って、蹌踉めきつつも立ち上がり駆け出す。
うつ伏せに倒れたルッチさんは、いつの間にか人の姿に戻っていて。
彼を心配するように、その上にハットリちゃんが留まっていた。
『ハットリちゃん、私のシャツの中に！』
「ポ、ポッ！？」
来たる爆風に備え、私はハットリちゃんを急いで胸元に仕舞い込む。
そしてジャケットを脱いで頭から被ると、動かないルッチさんを覆うように力強く抱きしめた。
「──砲撃！！！」
耳を劈く勢いの鳴動と熱風が巻き起こる。
背中が焼けるように熱い。ジリジリと焦がされる痛み。
静寂が訪れるまで、私は直前に見たものを思い返していた。
(ルッチさんの、背中の傷)
以前写真で見た通り、今でもくっきりと残っていた。
当時の幼い彼も、こうして1人で……背中に熱を浴びていたのかな。
痛みと熱さに抗うように、私は彼を抱える腕に力を込めた。
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なめこ(プロフ) - 綺世さん» 綺世さん、コメントありがとうございます！ルッチの魅力を伝えるのが中々難しかったので、そう言っていただけて嬉しいです〜……！機会がありましたら、次作の際も宜しくお願いします！ (2023年3月4日 9時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 完結おめでとうございます！この作品に出会い、ルッチ推しになってしまいました。次作も楽しみにしています！執筆お疲れさまでした！ (2023年2月28日 14時) (レス) @page50 id: 782601e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - Jaさん» Jaさん、嬉しいお言葉ありがとうございます〜！長い作品なのにありがとうございます……笑 引き続き更新頑張って行きます！ (2023年2月1日 19時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
Ja - とても面白くて昨日から一気読みしました！！更新これからも頑張ってください！！ (2023年2月1日 9時) (レス) @page40 id: f8125b9f7e (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 酢さん» 酢さん、ありがとうございます……ご満足いただけたようで何よりです笑 CP9沼の民の妄想に、最後までお付き合いいただけますと幸いです！ (2023年1月22日 16時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2022年12月3日 15時
