131話▼世界はそれを ページ35
▼カク視点
セント・ポプラでの生活は、今まで感じたことない程に長閑だった。
夜襲もなし。災害もなし。
ホテル泊の自分達は日中街を彷徨けば、衣食住で悩まされることもなし。
何不自由なく1日が終わる。
ルッチが退院してからはボウリングもした。
3人分の小遣いを注ぎ込みUFOキャッチャーもした。
今まで過ごせなかった"普通の日常"を取り返す如く、思いつく限りのことを何でもしたのだ。
感想は、"こんなものか"の一言に尽きる。
「……グアンハオへ行かねェか？」
「おォ、そりゃ名案じゃ」
珍しくジャブラと意見が合った。
正直限界だったのだ。
感情を誤魔化すことなど、この刺激のない生活ではそう続くわけもない。
(きっとAはスペアも出せんじゃろ)
彼女がいれば、全てが良い思い出になったに違いない。
裏を返せば……彼女無しではどれも味気ないもので。
恐らく各々が、何か物足りなく感じている。
それぞれ異なる形。それでも確かな空白。
そこは"愛"の在り処であったと、今になって思い知った。
町を襲う海賊を懲らしめても満たされなかったのだ。
……殺せば良かったのか？
いや。これはAでなければ埋められない。
「ァ丁度手頃な船1つ！よよいッ」
「行く当てもないものね」
皆が空元気を出して、笑いながら海賊船へと向かった。
久々に降り立つ故郷は、昔とちっとも変わらぬ景色。
娯楽施設も何も無いこの土地で育った。
斬撃を飛ばすやり方も、空気を蹴る方法も。全てここで学んだことだ。
(Aが来たら、どんな反応をするかのう)
……いかん。また考えてしもうた。
1度思いを馳せてしまえば、止まらんくなるというのに。
Aを失ったことなど受け入れられるはずもない。
正気に戻ったらダメだ。
だって彼女がいない世界なんて、何故残る意味がある？
殺さずとも、己を肯定させるもの。
明日を願いたいと思えるもの。
お前が教えたっちゅうのに。置き去りとは酷い話だわい。
今更それ抜きに生きてみせろと言うつもりか？
「チャパ！
何やら怪しい匂いがするぞー」
フクロウの声にハッとする。
……遠くから、大勢の足音。
訓練所の子供達にしては不揃い過ぎた。
「もしや……追手とやらか」
迷惑な話、と言いたいところだが。逆に好都合かもしれない。
体を動かしている間は、余計なことを考えずに済む。
「見つけたぞ！CP9だな」
「丁度良かった。身体が鈍って仕方ねェからな……
精々楽しませてくれ」
海軍の制服や黒スーツを纏う集団に囲まれる。
ルッチがニヤリと笑うのを合図に、自分達も臨戦態勢をとった。
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なめこ(プロフ) - 綺世さん» 綺世さん、コメントありがとうございます！ルッチの魅力を伝えるのが中々難しかったので、そう言っていただけて嬉しいです〜……！機会がありましたら、次作の際も宜しくお願いします！ (2023年3月4日 9時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 完結おめでとうございます！この作品に出会い、ルッチ推しになってしまいました。次作も楽しみにしています！執筆お疲れさまでした！ (2023年2月28日 14時) (レス) @page50 id: 782601e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - Jaさん» Jaさん、嬉しいお言葉ありがとうございます〜！長い作品なのにありがとうございます……笑 引き続き更新頑張って行きます！ (2023年2月1日 19時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
Ja - とても面白くて昨日から一気読みしました！！更新これからも頑張ってください！！ (2023年2月1日 9時) (レス) @page40 id: f8125b9f7e (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 酢さん» 酢さん、ありがとうございます……ご満足いただけたようで何よりです笑 CP9沼の民の妄想に、最後までお付き合いいただけますと幸いです！ (2023年1月22日 16時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2022年12月3日 15時
