125話▼ココロのすきま ページ29
▼ブルーノ視点
バスターコール始動から、それ程時間が経ったわけでもない。
しかしながら自分達が踏み立つこの島の惨状は、まるで長年の戦争明けのソレだ。
おれは砲撃音が止むまで、傷ついた仲間を"
(大した能力だ)
Aの情報に誤りはなし。
彼女は見事に各々の居場所を言い当てたのだ。
「……何処かしら」
だが当の本人の姿は、一向に見つからなかった。
おれ達も見聞色は使える。
しかし彼女みたく、遠くの存在を察知することまでは叶わずにいた。
手がかりは、ルッチの傍に落ちていた……彼女のジャケットと思しき
彼女も支柱内部にいたと推測されるが。
「ハットリの紙は、Aが書いたと思うんだがなー」
「血塗れの己の危機には目もくれずゥ……そんなことを成す"命知らず"は！確かにAしか〜思い浮かばねェ」
「だがルッチの周りには瓦礫以外何もなかった。
それはここにいる全員が証人だろう」
おれがそう呟けば、皆口を噤んでしまう。
互いの考えは痛い程に分かった。
導かれる"解"への分岐は、殆ど残されていないのだから。
砲撃の跡、血文字のメモ、焦げた服。
支柱周辺は激流の海。
彼女は能力者。
「もう十分探したんだ。
おれ達も早いとこ移動するぞ」
静寂を破るその声に、おれ達は目を見開く。
「……ジャブラ」
「おれの
つまりここにはもういねェんだろうよ。
……アイツのことだ。政府の船にでも拾われたんだろ」
"このままじゃ助かる命も助からねェぞ"と声を張るジャブラは、やはり昔からの年長者と言ったところか。
正直、彼の声に救われたのだ。
ただでさえ敗北に打ちひしがれるおれ達に、"仲間の死"という事実はあまりにも響く。
今は無事だと信じる他ない。
「……そうね、彼女の生命力は随一だもの。
既に追手も来てるようだし」
「げ！大声出しちまったぞ……
これも
「……ク、使えん鼻じゃ」
心が軽い。
清々しさとはまた違う、全身に風穴が空いた気分。
「医者を求め、ァいざ〜参らん！」
「カクを背負うジャブラを見ると、昔を思い出すなーチャパパ」
重荷を降ろしたような。
……重荷を失い、隙間が生じてしまったような。
「……忘れとらんぞ。
お前が、わしの服に……タランチュラを……」
「あの時ゃ毒蜘蛛を"取ってやった"んだと何度言わせんだ！寧ろ感謝されて然るべきだ
──嫌にさっぱりしたこの感覚を理解するのは、もう少し先の話。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 473人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なめこ(プロフ) - 綺世さん» 綺世さん、コメントありがとうございます！ルッチの魅力を伝えるのが中々難しかったので、そう言っていただけて嬉しいです〜……！機会がありましたら、次作の際も宜しくお願いします！ (2023年3月4日 9時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 完結おめでとうございます！この作品に出会い、ルッチ推しになってしまいました。次作も楽しみにしています！執筆お疲れさまでした！ (2023年2月28日 14時) (レス) @page50 id: 782601e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - Jaさん» Jaさん、嬉しいお言葉ありがとうございます〜！長い作品なのにありがとうございます……笑 引き続き更新頑張って行きます！ (2023年2月1日 19時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
Ja - とても面白くて昨日から一気読みしました！！更新これからも頑張ってください！！ (2023年2月1日 9時) (レス) @page40 id: f8125b9f7e (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 酢さん» 酢さん、ありがとうございます……ご満足いただけたようで何よりです笑 CP9沼の民の妄想に、最後までお付き合いいただけますと幸いです！ (2023年1月22日 16時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なめこ | 作成日時：2022年12月3日 15時
