苦しいのは、だれのせい? ページ21
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「恋でもしてるの?」
先生の言葉が頭から離れなかった。
恋の定義が分からなくて友達に聞いてみたけど、
「そんなのわからないよ。好きは好きだし!」
と言って笑われた。
帰りの電車で「好きな人」と検索してみた。
「理由を作って会いたくなるのが好きな人」
そう書かれた記事を見つけてハッとした。
理由を作って会いに行きたくなる人…
それって…
伊野尾先生?
倒れた後、お礼を言うために会いに行った
今日も検査の結果を言うために会いに行った
そして、また体調を崩せば会いに行ける
理由を作るというのは、自分の「好き」という気持ちを素直に認めたくないからかもしれない。
私は、初めての恋をした。
その相手は、あろうことか
好きになってはいけない存在。
この恋は、とても苦しかった。
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あっという間に衣替えの季節になり、皆の気分も心なしか開放的になったように感じる。
伊野尾先生のことが好きだと気付いてから、そのことは誰にも言えずにいた。
保健室に行けば行くほど先生への気持ちは大きくなっていって、
だからと言って行くのをやめることもできず、ゴールの見えない想いに戸惑った。
A「先生。」
伊野尾「おぉー、体調どう?暑くなってきたし、バテるなよ。」
A「まあまあです。」
伊野尾「ちゃんと薬飲んで、栄養取ってる?」
A「はい。」
そう答えたけど、本当は薬を飲んでいなかった。
元気になったら、会いにくる口実がなくなるから。
恋をするとこんなに面倒な女になるとは自分でも思っていなかったが、今はこうすることしかできなかった。
伊野尾「そうか。最近は炭水化物を抜く人がいるみたいだけど、ちゃんと米は食べないとな。」
それから白米についての話を長々と聞かされたけど、先生の綺麗な顔に見とれてしまって、話の内容なんて殆ど頭に入って来なかった。
先生と一緒にいられる時間が長くなって嬉しかった。
A「先生、ありがとうございました。そろそろ帰りますね。」
伊野尾「おう!」
ドアに手を掛けた時、先生は付け加えるように言った。
伊野尾「やっぱ夏服はいいな。露出度が高くなって。俺が校長だったら、校則で女子のスカート短くするんだけどなー。」
A「先生、それ私が訴えたら負けちゃいますよ。」
こんなやりとりも、一つ一つが愛おしかった。
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作者名:はー子 | 作成日時:2018年3月27日 22時