深く、沈む (ページ8)

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情事が終わって、彼は丁寧に後処理をして私を先にシャワーにまで行かせる優しさぶりを見せた。

元カノの時は当たり前だったのかなあなどと考えたり。

彼もシャワーを浴びると浴室へ行ったのを見届けて月が綺麗な外を見たくてベランダへ。

みんなが寝静まってしん、とした夜の空気が私は好きで、でも今日だけはなんだかいろんな感情になって孤独なような気がして涙が出てしまった。

「泣いてんの？A。」

そこには、ダボダボの黒のスウェットを着た辰哉の姿。
丸メガネもそのスウェットも何故か彼が着ると様になる。

『 …私何してんだろうなあって。』

「ねえ、A。後悔してる？」

『なにを？』

「俺としたこと。」

『してるよ。』

「 …そう、」

それだけ呟くと彼は俯き、私の隣にきてしばらく見ていなかったものに炎をつけて紫煙をくゆらせる。

『やめたんじゃないの？』

「やめてたけど関係ないよ、もう別れたんだから。」
「 A帰る？帰るならタクシー呼ぶよ。」

『帰った方がいい？』

「そうじゃないけど、Aが俺としたこと後悔してるっていうから。もう一緒にいたくないのかなって」

へらっとなんでもないように呟いたつもりなんだろうけど煙の揺れるそれが震えていて。

『後悔してるよ。だって、辰哉とは友達だったから。こういう関係になったら終わりが来るじゃん。恋人になっても同じ。終わりが来る。だけど、友達なら終わらない。ずっと同じでいられる。だから、辰哉とは友達でいたかったなって思ってた。』

『でもいいんだ。それを許したのは私だし、辰哉はちゃんと聞いてくれた。』

『あ、あと傷もちょっと癒えた気もするし。』

ただ本音を伝えただけなのに、涙が止まらなくて最後笑って誤魔化したら彼の頬も光ってて。

意外と似たもの同士なのかなって。