すんどめ ページ33
・
「で、どういう状況なの？」
満員電車の時間は過ぎていたから2人並んで座ってたら、気持ち悪いのか俺の肩に頭を乗せるA。
眉間に皺を寄せながら、こうなった経緯を話してくれた。
「さっきの人、私が働いてる店の店長なの。今日、新しいバイトの子が入って歓迎会しよってなって盛り上がりすぎたというか」
「また断れなかったわけね」
きっとAのことだから、その場の雰囲気を壊さないようにって注がれた酒は全部飲んでたんだろうな。
ほんともう、
「明日バイトは？」
「……んー、休み」
「だったら寝てろ」
「……ん、」
無防備にも程がある。
俺だからいいけど、本当に寝るなって。
だけど寝てしまったお前が悪いんだよ？て、言い訳は完成した。
俺はまだAの家は知らないから、最寄り駅について完全に眠ってるAをおぶって向かった先は自分の家だ。
家に入ってとりあえずソファに寄りかからせて上着を脱がせる。
「おーい、水飲む？」
「んー、ん」
「ふふ、飲むのね(笑)」
常温でおいてあるミネラルウォーターを持ってリビングに戻ったら、ソファに横になってるA。
ソファの前に腰掛けて、肩を軽く揺すってみる。
「ほら水。飲んだ方が楽になるよ」
「……いらない、」
「いるって言ったじゃん」
「のめにゃい…」
にゃいってなに……もう。
しゃーねぇな、とAの体を起こして隣に座り、細い顎を指で固定して口を開けさせる。
小さく開いた口元へ飲み口を押し当てて、ゆっくりと水を流し込んでやった。
コクコク、と喉の奥に水が通る音がした。
「もういい？」
何も答えなかったけど、ふいっと顔を背けたから多分良いんだろ。
でもその拍子に少し顎に垂れた水。
「むぅ……」
こてんと、俺に寄り掛かるAに視線が泳ぐ。
あっちこっちいってた視線が辿り着いたのはAの唇で、一度そこを意識してしまうとそこにしかいかなくて、
「だからAが悪いんだからな？」
男らしくないことを言いながら、Aの唇に吸い寄せられるように顔を傾けた＿＿＿瞬間思い出したのは、学生時代一度だけキスをしようとして避けられたこと。
「っ、バカじゃん俺」
すんでのところで思いとどまった。
同じことしようとしてどんすんだって。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5340人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - みぃゆさん» コメント有難うございます☆そう言ってもらえて嬉しくて書いて良かったなと思っております！伏線回収するのが私自身楽しかったのでそこを意識してもらえて良かったです！他の作品も気に入ってもらえると良いなと思います！有難うございました(o^^o) (2021年6月10日 6時) (
レス) id: 21f13df572 (このIDを非表示/違反報告)
みぃゆ(プロフ) - シリーズ完結おめでとうございます。全部幸せになれる作品ばかりで、本当に楽しかったです。伏線回収が色んなところにあって、見つける度に｢おぉ！｣と思いながら読んでました。これからゆきんこ様の他の作品も読みたいと思います！本当にありがとうございます！ (2021年6月9日 23時) (レス) id: 3958fa175b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 智希さん» 智希様！すみません！お返事返すの凄く凄く遅くなってしまいました。シリーズ全て追いかけてくださり有難うございました！私自身伏線を回収するのが楽しかったので機会があればまたこういったものが書けたらなと思ってます！本当に有難うございました(^^) (2021年6月8日 9時) (レス) id: 21f13df572 (このIDを非表示/違反報告)
智希(プロフ) - ゆきんこさん！お久しぶりです！全ての完結おめでとうございます！紫さんの時からずっと見させて頂いていたこのシリーズ。毎回ここで繋がるんだ！とか伏線が回収されていたりだとかですごく楽しかったです。終わってしまうのが寂しいです。また別の作品もお邪魔します！ (2021年5月5日 7時) (レス) id: ccf4f23953 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - みぃ。さん» 最後までご愛読下さり有難うございました(^^)書いてきた私も嬉しいような淋しいような気持ちを味わいました！始めて1人1人と向き合って書いたので思入れも多い作品です。お暇な時にでも、またみぃ。様のお供になれたら嬉しく思います！！ (2021年4月18日 9時) (レス) id: e0fcc6876b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2021年4月5日 9時
