岩本さんは、気づいてくれない。【黄】

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寝坊してお弁当を作り損ねたある日のこと珍しく学食にいると、「確か照の友達だよな？」と話したことはないけど照の友達だという認識が互いにある人に出会した。


うどんをちゅるり、と口に入れてペコリと頭を垂れる。



「丁度良かった！ あのさ、ちょっと頼みがあんだけど」



人懐っこそうな笑顔で両手を合わせてきた彼の次の言葉に驚く私。



「え、合コン？」

「そ。人数足んなくて、あんた顔良いし。絶対モテるよ！ 彼女いないならどう？」

「あー、えっと、」



彼女いないなら、という発言ですべて理解しました。

私、男の子だと思われてるね。



そりゃあ、大学生になってもシャツとジーパンばかりの私、髪だってショートだし染めてもいないから男の子と間違われやすいのは承知だけども、こうも堂々と男の子として誘われたのは初めてだ。



「おい、こいつ女だから」

「え、は？ ええ？」



後からやってきて私の隣に唐揚げ定食を置いた照と私を交互に見たあと、ええ！？と盛大に驚く彼に何だか申し訳なくなる。


だからもう一度ペコリとしておいた。



…ちゅるん。もぐもぐ。






「ほっっとにごめん！ いやよく照と居るし、親友だとか言うからてっきり、その、」


親友？ わあ、そうなんだ、ふふ。


「だって一番落ち着くんだよAといると。でも合コンには誘うなよ」

「ほんとごめんて」

「ううん、全然気にしてないから」



そう言えば隣からポコッと軽く拳が頭に飛んできた。


なに？と見れば、"ばーか"と口が動いてる。


なによ馬鹿って(笑)。






「あ、じゃあさ。合コンはなしで、今度普通に飯行こうぜ！ せっかく大学生になったんだし、交流会よ！だったら良いだろ？」

「うん、それなら」



社交辞令でも嬉しい。

新しい関係を築くのはそんなに得意じゃないし、バイトを増やしてるせいでなかなか関わる機会が少ないから、こうして人と関わるチャンスは素直に有難く思う。




そして予想外にも、彼は本当に交流会とやらを開いてくれて、同級生から先輩まで１０人程で個室の居酒屋での食事会に誘われた。





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