【d!】黎明、夜明けを待つ。 (ページ9)

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目が覚めたら知らない天井な件について。大方病院だかに運ばれたんだろう、薬品の匂いがする。五感戻ってて良かったなんて考えるが声が出ない。喉を痛めたからだが、風邪の様な音しか出せない。無理に出そうとすると喉を痛める悪循環。こういうのを詰みゲーって呼ぶんだろうな。

　スマホもない。あったところで壊れてるだろうが、スマホなんて個人情報の塊しかない。もし生きていたらヤバい。検索履歴とか見られたら終わる。穴があったら入りたい。

　脇腹に激痛を感じる。ここから出血してたんだな。応急処置はしてくれたんだろう、血が抜けていく感覚は無い様で安心した。ちなみにブーゲンビリアは回復力高いので輸血とかは基本必要ない。擦り傷も少しすればすぐ元通りである。

「っ……はー……」

　腹に力を入れてやっと声と呼べるものが出た。ただ脇腹の回復に障るのであまり出したくはない。治るまでは静かに過ごしていよう。

　まずここが何処なのか確認したい。ベットはカーテンで仕切られていて様子が分からないが、光が差しているのは伺える。窓のところまで行ってみよう。

　片腕を支点にしてゆっくり立ち上がる。足元を見ると少し汚れていて、血が付いているのも見えた。ベットのシーツにも勿論付いていて、少し申し訳なく思った。

　窓まで近づくと、少し日が落ちているのが見えた。あれからどれほど経ったのか分からないが、今は３時くらいだろう。学校が終わったのか、下校中の子供の声も聞こえてくる。

　下を見ると、沢山の花が咲いていた。手入れが行き渡っているようで、どの花も綺麗に咲いている。母の趣味もこんな感じだった。実家の庭には年中花が咲いて、各部屋には花瓶が必ず置いてあった。野菜も育てていた。夏の間は野菜ばっかり食べさせられたんだった。なんで上手に育てられるのか不思議である。私も大学の一角で研究の一環として育てているがあんなに上手にはできない。母というものはすごいな。

「そこで何をしているの？」

「！……ぁ、の」

「そこは一般人は入っちゃいけないはずだよ。君はどうやって入ったの」

　入っちゃいけないなんて知らないが。私だって気付いたらここだっただけで、早く帰りたい。とにかくこのままだと不法侵入と勘違いされるだけだ。何か書くものがあれば良いが。

　白の軍服を着た男へ待ってというサインを送る。