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サボりとも捉えられかねないので、氷で簡易的な囲いを作った。後で処理すればバレないだろう。
手に意識を集中させる。じわじわ指先が冷たくなる。木箱に霜ができる。吐いた息も白くなる。指先が氷に覆われている。氷が木へ染み込む。パキパキと音が鳴る。そうして、木箱が全て氷に覆われてしまった。
「これを、壊せば……」
この時には危機感なんてものは感じなくて。好奇心を満たすためにこの木箱を開けようとしていた。爆弾だろうが関係ない、何が入っているのか知りたかった。
近くのテーブルに置いてあった工具を使って砕こうと思い、立ち上がった。近くと言っても何メートルか先だったので、少し早足で取りに行く。目に入ったハンマーを持った瞬間__
「っはあ!?」
___鼓膜が破壊するような爆発音。背中に感じる炎の熱さ。上へ上へと上がっていく灰色の煙。木っ端微塵になったあの木箱が見える。氷も溶けて水になっていた。
体が受けた衝撃がデカ過ぎる。脳の信号に四肢が応えられていないのか。それとも脳が落ちたのか。だが離れていて幸いだった。あれを直で受けていたらと思うとゾッとする。
爆風に倒された体が言うことを聞かない。頭も打ったからだろうか。この血は私のものか。それに麻痺状態の様な感覚で気分が悪い。
「誰か……いないのか……?」
こんなに小規模な爆発だとしても。煙は高く上がっているし、窓ガラスも揺れていた。薄暗い倉庫だから、炎の赤は見つけやすいはずだ。なのに、誰もこちらに来ない。
私の体を起こすことができれば、この火事も消火できるのに。誰の足音もしない。聞こえるのは炎のパチパチという音、私の口呼吸の音と___入口付近に足音がする?
これが誰かは知らないが、この火事に気付いただろう。こちらへ来ずとも、軍に報告なり何なりしてくれれば万々歳。
「Aさーん!僕そろそろ上がりますね!」
彼はこの火事に気付いてない?こんなに激しく燃えて、湧いて出てくる様な煙にも気付かないなんて。
この倉庫はすべてのフロアが繋がっているし、見えないなんて事はない。この場所も入口から左の奥にあるだけで、棚で見えないこともない。
煙が見えないのか。この倉庫の薄暗さに隠れて見づらいんだ。炎も、私が作った囲いのせいで入口から見えない。やらかしたな、なんて呑気に思っているが。そろそろ呼吸がし辛い。酸素が薄くなってきたんだろう。
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作者名:生茶 | 作成日時:2023年10月29日 1時