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ここから地面まで十メートル弱。飛び降りても死にはしない。芝生を踏む音は出るだろうが、着地してすぐ走り出せば問題ない。飛び降りるなんて初めてだが何とかなるだろう。
「っペ神！そこに誰かいるか！」
地面に着くと同時に彼の大声が聞こえる。大声を出した本人にも私が芝生を踏んだ音が聞こえた様だ。鞘から刀を抜く、鉄が擦れるような独特の音がした。
ペ神と呼ばれた彼は全開になった窓から身を乗り出してこちらに視線を送る。目こそ合わなかったが、動くなという怒号が飛んできた。しかしそれに従うほど私は馬鹿じゃないし従順ではない。その頃には走り出していた。
道が分からないのは案外好都合だったかもしれない。途中何度か細い道へ入ったり、道とは言えない様な所を走ったりした。彼も予想外の行動をされて、ショートカットしようにも複雑すぎる故に私の後ろを追いかける事しかできていない。
だが私も疲れてきた。運動不足なんてことは無いはずだが……病み上がりというのが祟った。休憩なんてする筈も無いが、上手く撒かなくては。
丁度入り組んだ道へ入った。何処かは分からないが、門は近くなっているはず。ここを抜ければ出られる。少し隠れて、彼が引くのを待とう。
「今大人しく出てくるなら、悪い様にはしない」
いやあなた私のこと斬ろうとしてませんでした？逃げた時点で私の死は確定しているんですが。分かりきってるのに出る訳ないだろばーか、と心の中で呟いておく。本人に言えるほど強くはないのだ。
「かくれんぼ？そんなの久しぶりにやるよ」
楽しくなってきた、なんてサイコパスじみたセリフをマジで楽しそうに話す彼に戦慄する。これが友達ならどれだけ楽しいかくれんぼだったか。生憎男に捕まえられるほど魅力ないからな自分。すると、彼が思い出した様に話し始める。
「君が目指している裏門だけど……あそこを抜けても意味無いよ。あるのは崖だけ、飛び降りようものならすぐあの世行き」
なにそれ聞いてない。どんな立地に建ってんだこの城。私の努力は水の泡って事ですか？クソ詰みゲーだわマヂ無理。
物陰で息を潜めて、気配を感じられない様に身も縮める。でも隠れているのは背中だけ。こちらへ来たらバレるのは確定。木材か段ボールか何かあれば全体を隠せるのだが。
「君はもう逃れられない。君も分かってるだろ」
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作者名：生茶 | 作成日時：2023年10月29日 1時
