生意気ボーイ

報われない ページ48

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ヒナ｢ごめんね？仕事中に顔を出しちゃって。
あ、心配しないで、今日は“いちお客さま”として来てるから！｣




私に笑いかけてくれるヒナさんは、どこからどう見ても｢私よりいい女｣







アユ｢Aちゃん、私が接客するよ？｣



『いえ、大丈夫です。』




アユさんから、独立しなきゃいけない



いい機会、かもしれない





ヒナさんにも動じない、アユさんみたいな強い女になるために





『私、接客してきます』


アユ｢ふふ、戦闘に行くみたいね。頑張って。｣




私の意図をくんでくれたのか、アユさんがしっかりと笑って香水の香りを残してレジに回る



今は、このお店に数人しかいない






深呼吸をする






大丈夫、大丈夫





この方は、お客様






私の大事な、“クライアント”






目付きが変わったのが自分でも分かった






『お待たせしました。今日はどのような御要件でしょうか』


ヒナ｢わ、カッコイイな。プロ、って感じがする｣


『ありがとうございます、笑』





可愛いなぁ、ヒナさん





ヒナ｢あのね、お揃いのなにかリングみたいなもの。
それが欲しくて｣


『お揃い…んー、お相手は女性ですか？』


ヒナ｢ううん、男性です｣





胸がざわつく



ダメ、今は、“仕事中”







『それでしたら、男女兼用のお揃いのリングがよろしいですね
こちらなどは、どうでしょう？今流行りのブランドでして、
アクアクエスチョンというブランドでございます』


ヒナ｢アクアクエスチョン…あぁ、あの人が好きなブランドだ…｣





あの人。



きっと、頬を染めながらその人を想うヒナさんは、恋してる






きっと、相手は…








ヒナ｢これ、買います！これが一番、玲於っぽい｣









やっぱり






予感が的中して、予想通りすぎてもう笑いがこみあげてきそう






嘘、いち早く出るのは嗚咽と涙かもしれない






下唇を噛みながら、私はなんとか感情の波に耐える







やっぱり、両片思いなの？









『告白、されるんですか？玲於くんに、』







その可能性が、ないと思ってたわけじゃない








ただ、そうであって欲しくないという想いが私の思考外へと排除させた









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ヒナ｢実はね、付き合ってるの｣









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ほら、やっぱり









報われないんじゃない、こんな片想い









『おめでとうございます』









思ってもいないことを言いながら、私はにこりと笑って見せた









もう、この恋心は許されない







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