scene119 初めて触れた日のようで�� ページ35
寮を出て、少しした時、ほんの少しだけ後ろを歩くAの細い指先がふわりと触れて、そのまま絡んできた。
なんだか、初めて手を繋いだ時みたいな緊張感が込み上げてくるのと同時に、Aからアクションを起こしてくれたことに安心する。
Aの家のドアが開いて、久しぶりの匂いがふわりと鼻を掠めた。
部屋の隅に持ってきた荷物を置く。
振り返ったら彼女はこちらを見つめていて、視線が交わって目元が優しく微笑む。
「…抱きしめていい？」
「うん、ひとつひとつ断りいれなくて大丈夫」
「ん、」
Aは少し困ったように眉を下げて笑って、一歩二歩と近づいてきて、脇の下辺りにAの両腕がスッと入り込む。彼女の肩を抱いて自分の胸元にギュッと押し付けた。
ここまでくると、先を望んでしまう。嫌なら突き飛ばせって言ったものの、本当に突き飛ばされたらかなり落ち込みそうだ。
今はここまでで、我慢我慢…
本能と戦いながら気がすむまで抱き締めたあと、Aは思い出したかのように「あっ」と声を漏らし、お風呂入ると言い脱衣所に行ってしまった。持ってきた荷物を整理したり、テレビ見たりして時間を潰す。
ガタリと音がして、脱衣所からAが出てきた。ツヤっとした頬に濡れた髪の毛。いつもより幾分幼く見える。
「A、髪乾かしてあげる」
「えっどうしたの？」
「いいから、ここ座って」
「最近髪伸びたからけっこう時間かかるよ？」
「ん、早く」
ドライヤーのスイッチを入れて髪に当てる。
細くて、髪を染めたりしてないツヤっとした髪。真っ黒というよりは少し茶色がかっている。しかし長い髪乾かすのなかなか難しいな。
5分程して後ろ側は大体乾いたのかな。
「A、こっち向いて、前乾かすから」
「もう、いいよ、ありがと」
「だめ。早く」
「えー」
そう言いながらも向かい合わせになる。「なんか恥ずかしいんだけど」と目を伏せた。
風を当てて、髪を触ると気持ちよさそうに彼女は目を閉じた。
「はい、終わり。乾いたよね？」
「うん！ありがと」
片思いをしている時のように一歩一歩距離を縮めていこう。
付き合う前は、Aの事がいつも気になって、Aの事ばかり考えていたのに、いつの間にか優しい彼女に甘えてそれが出来なくなってた。
またはじめからやり直せ、と言われているようで身が引き締まる思いだ。
まずはまだ言ってなかった気持ちを伝えなきゃ。
「A…好き」
赤くなった彼女の頬に、胸が高鳴った。
scene120 冷たい瞳→←scene118 初めて触れた日のようで��
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アキ(プロフ) - jp0b1qさん» コメント有難うございます！だらだら長くて、楽しんで頂けているのかな？と不安になりながらも続けていたので、そう言って頂いて本当に嬉しく、力になります！読むの疲れてしまうと思いますが、ぜひ最新話までよろしくお願いします！ (2017年6月25日 0時) (
レス) id: 5a1b3de531 (このIDを非表示/違反報告)
jp0b1q(プロフ) - はじめまして！キラキラ楽しませていただいております！姫ちゃんの決断に涙が(´;ω;｀)これだけの長編、大変だと思いますが、ぜひ、もっと続けていただきたいです！ (2017年6月23日 10時) (レス) id: 8ef0863dfa (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - みずきさん» 続き更新しましたっ！切ない展開になってしまいました(´；ω；`) まだまだ、2人を追いかけます！ (2016年10月19日 21時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - AZUSAさん» コメントありがとうございます！二人には恋愛と同じくらい大事なものがある！二人の物語はまだ続きます！ (2016年10月19日 20時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - さりーさん» コメントありがとうございます！！続き更新しましたのでぜひぜひ！また感想あればお願いします！ (2016年10月19日 20時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アキ | 作成日時：2016年8月7日 20時
