scene113 たいせつなひと�� ページ29
「乱暴されたって、え？どうゆうこと？」
飲み込めない頭。いや、考えたり、想像したくない。
「Aがどこまで本当の事言ったかわからないけど、キスはされたって…」
もう、目眩が起こりそうだ。
何故彼女は相談のひとつもしてくれなかったんだろう。そんなに頼りなかった？
悲しくて、そして、Aがどんなに怖かっただろうと考えたら胸が張り裂けそうで。
「A、なんで何も言ってくれなかったんだよ…」
「柳田は自覚なしなの？」ミサキちゃんが俺を呼び捨てにするときは、酔っ払ってる時か、まぁまぁ怒っている時だ。俺の一言で彼女を怒らせてしまったらしい。
「なんの、話」
「新人マネといっつも一緒にいる事。Aは何も感じてなかった思う？」
「……」
何も言えなかった。
彼女に、相談できない、話せない状況を作ってしまったのは自分自身だったってことだ。
「Aが、なんで柳田に話したくないって言ったのかわからないけど…、とりあえず暫くはうちで預かるから」
本当はそんなの嫌だけど、Aに拒否されている以上、彼女の事を守ることは出来ないし、今はミサキちゃんに任せることにした。
一度医務室に戻り、買った飲み物を石川に渡した。Aは未だ顔を伏せたままで。
「A、冷める前に飲んで」ココアを手渡すが、受け取って貰えず。
「A、試合負けちゃった、ごめん」
一緒に部屋に入ったミサキちゃんが声をかけると、Aは顔をあげて、「私こそごめん」と呟いた。
「じゃぁ、俺、帰るわ。ミサキちゃん後の事は頼んだ。」
「うん…」
ここにいても何も変わらない。今はAの気持ちに整理がつくのを待とう。
部屋を出て扉を閉め二、三歩と歩いたところでドアが開く音がして、振り返ると立ってたのは、何か言いたげな石川。
「Aのこの助けてくれて、ありがとう」
「いや、それは偶然で…。あの、きっと何か理由があるはずです。Aが柳田さんのこと嫌いになるなんてあり得ないし…」
真面目な顔して何を言い出すのかと思ったら、予想外の言葉で思わず笑ってしまう。
「何、笑ってんすか」
「いや、ありがと。ちょっとしんどかったけど、楽んなったわ」
ずっと深刻な顔をしていた石川もやっと少し笑顔を見せた。
「明日の試合、負けませんから」
「もちろん」
バレーは多分ふたりにとって、また別の話で。
大切なものも、大切な人も同じふたり。
もしかしたら、意外といい仲になれるのかもしれない。
scene114 一筋でも光を→←scene112 たいせつなひと��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 565人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アキ(プロフ) - jp0b1qさん» コメント有難うございます！だらだら長くて、楽しんで頂けているのかな？と不安になりながらも続けていたので、そう言って頂いて本当に嬉しく、力になります！読むの疲れてしまうと思いますが、ぜひ最新話までよろしくお願いします！ (2017年6月25日 0時) (
レス) id: 5a1b3de531 (このIDを非表示/違反報告)
jp0b1q(プロフ) - はじめまして！キラキラ楽しませていただいております！姫ちゃんの決断に涙が(´;ω;｀)これだけの長編、大変だと思いますが、ぜひ、もっと続けていただきたいです！ (2017年6月23日 10時) (レス) id: 8ef0863dfa (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - みずきさん» 続き更新しましたっ！切ない展開になってしまいました(´；ω；`) まだまだ、2人を追いかけます！ (2016年10月19日 21時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - AZUSAさん» コメントありがとうございます！二人には恋愛と同じくらい大事なものがある！二人の物語はまだ続きます！ (2016年10月19日 20時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - さりーさん» コメントありがとうございます！！続き更新しましたのでぜひぜひ！また感想あればお願いします！ (2016年10月19日 20時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アキ | 作成日時：2016年8月7日 20時
