scene96 bittersweet�� ページ12
帰る前に見たマサの表情を思い出して胸が苦しくて、涙が出てくる。
クッションに顔をうずめると、ガチャガチャとドアの施錠が外れる音がした。慌てて涙をティッシュで拭って玄関に向かう。
ドアが開いたらもちろんそこにいるのはマサで。
「おかえりなさい」
「なんで声掛けないで帰ったの？」
少し機嫌が悪い声色に、さっきまで考えていた不安がこみ上げてくる。
「話かけるタイミングがなくって…」
「タイミングなんて気にしなくていいのに…ってゆうか、A泣いてた…？」
「泣いてない」
「嘘つくなよ、何？どうしたの？」
「…」
私が俯いて足元を見ると、視界に彼の手が入ってくる。その手は私の手をつかんで引っ張られる。
ベッドに彼が座ると「おいで」と隣に座らされ、抱きしめられ彼の匂いが鼻腔いっぱいに広がる。
「Aのタイミングでいいから、話して？」
「…」
「もしかして、バレンタインのこと？」
察しがいいマサにさっそく核心をを言い当てられて、コクリと頷くしかなかった。
「マサいっぱいチョコもらってるし、なんか嬉しそうだったし…」
「仕方ないだろ？せっかく来てくれたのに、いらないですとは言えないし…」
「でも、」
「でも？」
「嫌だった」
「うん、ようするにヤキモチ妬いてくれたってこと？」
「うん…」
ぎゅっとさらに強く抱きしめられ、ふふっと彼が笑った声が耳元で聞こえた。
「俺の気持ちわかった？」
「え…」
「Aもいつも無防備すぎだから、ほんといつも不安になる」
「そうなの？」
「そう、お互いさま」
「…ごめんなさい」
「俺も、ごめん、ちょっと浮かれた」
言いたいことと、聞きたい事、ちゃんと話せた気がして、チョコレートの存在を思い出す。
渡すなら今しかないって思って、抱きしめているマサの体を少し押し返した。
「チョコあるの」
「うん、なかったらどうしようかと思った」
彼は眉を下げて笑った。
買ってきたチョコを手渡す。「手作りじゃないけど」と言うと「Aからならなんでもうれしい」
と言われて、苦しかった胸がすっと溶けていくよう。
彼はいつだって、私のことを一番に考えてくれているのに、それに気づけない自分が少し情けなくなった。ふたを開けて彼はそれを一つ頬張る。
「ん、うまい」
「よかった」
ほっと息をつくと、唇にやわらかい感触。唇を食べられるように甘いキスをされると少しビターなチョコレートの味。
顔が離れると、彼は自分の唇をペロリと舐めた。
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アキ(プロフ) - jp0b1qさん» コメント有難うございます！だらだら長くて、楽しんで頂けているのかな？と不安になりながらも続けていたので、そう言って頂いて本当に嬉しく、力になります！読むの疲れてしまうと思いますが、ぜひ最新話までよろしくお願いします！ (2017年6月25日 0時) (
レス) id: 5a1b3de531 (このIDを非表示/違反報告)
jp0b1q(プロフ) - はじめまして！キラキラ楽しませていただいております！姫ちゃんの決断に涙が(´;ω;｀)これだけの長編、大変だと思いますが、ぜひ、もっと続けていただきたいです！ (2017年6月23日 10時) (レス) id: 8ef0863dfa (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - みずきさん» 続き更新しましたっ！切ない展開になってしまいました(´；ω；`) まだまだ、2人を追いかけます！ (2016年10月19日 21時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - AZUSAさん» コメントありがとうございます！二人には恋愛と同じくらい大事なものがある！二人の物語はまだ続きます！ (2016年10月19日 20時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - さりーさん» コメントありがとうございます！！続き更新しましたのでぜひぜひ！また感想あればお願いします！ (2016年10月19日 20時) (レス) id: 0fb2687632 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アキ | 作成日時：2016年8月7日 20時
