狐の嫁入り。

狐。15 ページ15

朝餉も美味しかった




燭台切はみんなの食べる姿を見て嬉しそうだった




みんな、とても嬉しそうな顔だ




私の住んでいた所はこんな笑顔はなかった




長「A、今日から少し内番を手伝って貰う」




「…うん」




長「歌仙と洗濯物をし終わったら燭台切と昼食の準備

昼以降は加州と大和守と畑の仕事をしてくれ」




「うん」




長「返事は「はい」にしろ」




「…はい」




長谷部は少し機嫌悪そうに私を見る




どことなく村の人に似ている




恐怖だけは少し感じる




恐怖だけはなくせと言われていても何故か感じる




加「長谷部〜、ちょっと厳しくない？

返事くらいさ」




長「俺は近侍だ、主に世話になるんだ

これくらい身につけておいてもらわないと困る」




加「狐の嫁として覚悟してきたのに

急にこんなとこ来てさ、俺だったら耐えられないよ」




長「…知ったことか」




ちらりと私に視線を向け




ふん、と鼻で鳴らし




睨まれたような気がした




長谷部はとても忠実な刀だと聞いていた




でもどこか私を拒絶していて怖い




宗「根は優しいんですよ、とても」




「…宗左」





宗「…呼び名も初対面から馴れ馴れしい、と

長谷部は怒っていましたが、余所余所しくされる方が

僕は嫌いですけどね」




宗左も清光と一緒で優しい




詮索せず、目の前の私を見てくれる




「…生まれた時から私は人を

呼び捨てで呼ぶように育てられた

私以外の者は全て下級だ、敬う呼び方をするな、と」




宗「…そうですか、それは親の言うことを

守っている貴方は正しいです」





目を細めて微笑む宗左




少し胸がすとんと軽くなった気がした

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