省エネ主義が二人。〈氷菓〉〈折木奉太郎〉 (ページ7)

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里志「なにって！聞いたことないのかい？」

「神山市の旧家名家は少なくないけど、桁上がりの四名家といえばその筋じゃ有名だよ」

「荒楠神社の十文字家、書肆百日紅家、豪農千反田家、山持ちの万人橋家さ」

「数字の桁が一桁ずつ上がっていくから、人呼んで桁上がりの四名家」

奉太郎「本当か」

千反田「名家かどうかは知りませんがそういう言い方は初めて聞きました」

『作ったの？』

里志「たまには提唱者になりたくなる時もあるさ」

「さ、ところで話は聞かせてもらったよ。実に興味深いね」

奉太郎「なにがだ」

里志「千反田さんがこの部屋に閉じ込められていたことさ！」

千反田「っは！そうでした！」

「私が来た時、この部屋の鍵は開いていました」

「でも後から来たお二人は鍵は閉まっていったと言っています」

『やはり自分で閉めたことを忘れているのでは？』

里志「神高のドアは中も外も鍵でしかロックできない仕組みになっている」

「千反田さんが中から鍵をかけることは不可能だよ」

千反田「これは！」

えるちゃんは鍵穴を見て“納得”というような顔をしていた。

奉太郎「相変わらず無駄に博識だな」

里志「データベースと言ってほしいね」

奉太郎「まあ、鍵のことは何かの間違いだろう」

「俺たちは帰るぞ」

と再びドアの方へ向かった奉太郎を追いかける。

するとえるちゃんは私たちの前に立ちはだかった。

千反田「待ってください！」

『なに？』

えるちゃんは私と奉太郎の手を取る。

千反田「気になります」

思ったよりも近くにあったえるちゃんの顔に、私たちはたじろぐ。

千反田「私、何故閉じ込められたんでしょう。もし閉じ込められたのでなければ、どうしてこの教室に入ることができたんでしょう」

えるちゃんの瞳に吸い込まれていく感覚があった。

彼女の長い髪がさらに伸び私たちを縛り付ける。

「なにかの間違いというのなら、誰のどういう間違いでしょうか」

「私、気になります」

えるちゃんの手に力が入ると私はハッとする。

先程の光景は幻覚だったのだろうか。

彼女の＿＿えるちゃんの眼差しには、いい加減な返事は許さないというような一種異様な力があった。

奉太郎「・・・そうだな、面白い」

と奉太郎は若干棒読みで言う。

『そうね、少し考えてみよう』

私も同じように言った。