省エネ主義が二人。〈氷菓〉〈折木奉太郎〉 (ページ2)

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伝統ある古典部の再生ページ2

Aside

高校生活といえば薔薇色、薔薇色といえば高校生活、と形容の呼応関係は成立している。

しかしそれは、全ての高校生が薔薇色を望んでいるという事を意味しているわけではない。

例えば、勉学にもスポーツにも、とにかくありとあらゆる活力に興味を示さず灰色を好む人間というのもいるし、それは私の知る範囲でさえ少なくない。

けど、それって随分寂しい生き方だな。

陽の落ちかけた教室で、旧友の福部里志に隣にいた恋人の折木奉太郎とそんな意味のことを話した。

すると里志はいつも浮かべている微笑みをちっとも崩さず、言ったものだ。

里志「そう思うよ。ところで僕は二人に自虐趣味があるとは知らなかったね」

いかにも心外ね。

隣にいた奉太郎が抗議した。

奉太郎「俺たちが灰色だって？」

里志「そう言ったかな。でも勉学にもスポーツにも二人がそういうものに前向きだとは、僕には思えない」

里志「恋愛に関しては別だけどね」

『・・・』

奉太郎「・・・別に後ろ向きなわけじゃない」

奉太郎は顔を少し赤らめて言った。

里志「そうだろうともさ」

「ただ単に【省エネ】なんだよね、二人は」

奉太郎は鼻を鳴らし、私は頷いて肯定を示した。

わかっていればいい、私は別に活力を嫌っているわけではない。

ただ単に面倒で、浪費としか思えないからそれらに興味を持たないだけなのだ。

至って地球環境にやさしい省エネが、私と奉太郎のスタイル。

その合言葉はすなわち、

奉太郎「『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に』」

私たちがモットーを披露した時の常で、里志は処置無しというように肩をすくめてみせる。

里志「要するにだね。これといった趣味もなく、この多彩な部活動の殿堂神山高校で部活にも入っていない二人は、結果だけ見れば灰色そのものだって事だよ」

奉太郎「・・・まあいいさ。先に帰れ」

里志「なんで？もしかして放課後デェト？」

『違う』

私と胸ポケットから奉太郎は詰襟のポケットから一枚の半紙を出す。

無言で差し出したそれを見た里志が驚愕に目を見開く。

いや、大袈裟な表現ではない。

別に本気で驚いたわけではないのだろうに、里志は本当に目を見開いた。