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鈴芽side
うおおぉ＿＿＿と聞こえる雄叫びと共に二人は体ごと扉にぶつかった。
ドアを押し、濁流を押し戻そうとする。
私は呆然とその背中を見つめる。
と、男性のシャツの左腕が赤く染まっていること、女性が右腕をおさえていることに私は気付く。
痛みに耐えかねるように、青年は右手で傷口をおさえる。
男性は右肩、女性は左肩だけでドアを押す格好になる。
男の人。怪我をしたんだ、私を鉄骨からかばって＿＿＿。
ようやく私は気付く。《地震です》と警報は叫び続けている。
地面が激しく揺れ続けている。
さっきから私の右手は制服のリボンをぎゅっと握っていて、もう指先に感覚がない。
怪我をしていても彼らは背中で必死に扉を押している。
この人たちは＿＿＿ふいに泣きそうな気持ちになって、私は思う。
訳も分からずにそう思う。
この人たちは、誰にも知られず、誰にも見られぬままに、誰かがやらなければならない大切なことを＿＿＿。
私の頭の中で、何かが動き始める。
彼らの姿が私の中の何かを変えていく。
地震は続いている。
こわばった右手を私は開こうとする。
握りしめているものを、私は離そうとする。
水を蹴って。走り出した。
二人の背中が近づく。
私は走りながら両手を前に突き出し、そのまま全力で扉にぶつかった。
「君は＿＿！」
二人は驚いた目で私を見る。
『なんで！？』
鈴芽「閉じなきゃいけないんでしょ、此処！」
そう叫んで、私は彼と並んで扉を押す。
たまらなく不吉な感触が、薄い板越しに伝わってくる。
その不快さを押し潰すように、力を振り絞る。
二人の力も増していくのを、私は手のひらで感じる。
扉はギシギシと音を立てながら、徐々に閉まっていく。
私はふと気づく。
男性がなにか呟いているのを。
「かけまくもかしこき日見不の神よ」
「遠つ御祖の産土よ」
「久しく拝領つかまつったこの山河」
「かしこみかしこみ」
バタン！大きな音を立て、ついに扉が閉まった。
鈴芽「閉じた！」『よし！』
男性は間髪いれずに振りかぶり、鍵のようなものを扉に突き立てた。
何もないはずの板の表面に一瞬だけ鍵穴が浮かび上がったように、私には見えた。
「謹んでお返し申すっ＿＿＿！」
そう叫びながら青年が鍵を回すと巨大な泡が割れるような音を立て、濁流が弾け跳び、水が降ってくる。
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名稀ーなきー(プロフ) - RENAさん» ありがとうございます(_ _)更新頻度は低いですが、この作品を読んでくれると嬉しいです！ (2023年2月5日 22時) (
レス) id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
RENA(プロフ) - 今日、映画を見に行き全てにほれて夢小説で探しました。とてもおもしろかったです．そしてキュンッとしました (2023年2月5日 22時) (レス) @page47 id: a8ec99ccfe (このIDを非表示/違反報告)
名稀ーなきー(プロフ) - レナさん» コメントありがとうございます！頑張ります(ง •̀_•́)ง次の更新をお待ちくださいm(_ _)m (2022年11月25日 21時) (レス) id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 好きです。 自分のペースで頑張って下さい。 (2022年11月25日 21時) (レス) @page27 id: d245eefcba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名稀ーなきー | 作成日時：2022年11月20日 15時
