1日目 私たちにしか見えないもの ページ5
鈴芽side
災難だった
あれから私はあの二人の事が気になり、廃墟へ向かった
だがそこには二人の姿はなく、あったのは扉。
開けてみたら、とても幻想的な風景が広がっていた。
そこには入ることができず、足元にあった石を抜いたらそれは生き物になって逃げていった
「やっと来た」
窓際の席でお弁当をつつきながら呆れ顔の絢が言い、
「重役出勤やねえ、鈴芽ぇ」
その隣で、半笑いのマミが卵焼きを口に入れる。
鈴芽「あー、まあ、うん」
私は笑顔を作りながら、二人と向かい合わせに腰を下ろす。
お昼時のざわめきと窓からのウミネコの鳴き声が思い出したように耳に届き始める。
私は半ば自動的にリュックからお弁当箱を取り出し、ふたを開ける。
マミ「きゃー、出たわー、おばさん弁当」
二人が面白そうに声をあげる。
おにぎりが海苔や桜でんぷんで飾られて雀のキャラ顔になっている。
錦糸卵がアフロヘアになっている。
グリーンピースが鼻になっている。
ソーセージがピンクの頬となっている。
卵焼きにもウインナーにも海老フライにも、にっこり笑う目と口がある。
鈴芽「あのさあ、上ノ浦の方に廃墟あるでしょ？古い温泉街」
と、私は二人に訊いてみる。
マミ「え、そうなん？絢、知っちょる？」
絢「ああ、あるみたいやね？バブルの頃のリゾート施設。あっちの山の中」
絢の指差す先を、私たちは見上げる。
風に揺れる
小さな湾を囲む岬があり、その上に低い山がある。
さっきまで私がいた場所だ。
マミ「それがどうかしたと？」
鈴芽「ドアが・・」
と口にした瞬間、あれほど笑い飛ばしたいと願っていた感情がすっかりしぼんでいることに私は気付く。
あれは夢じゃない。でも、友達とシェアできるようなことでもない。
あれはもっと個人的な＿＿＿。
鈴芽「やっぱいいや」
「「なによ！最後まで言いなよ！」」
二人の声がぴったりと揃う。
それが可笑しくてようやく自然に笑みが出た。
同時に、あれ、と私は気付く。
二人の顔の向こう、あの山から、細い煙が立っている。
鈴芽「ねえ、あそこ、火事かな？」
マミ「え、どこ？」
鈴芽「ほら、あの山のとこ」
絢「え、どこお？」
鈴芽「ほら！煙が上がってる！」
マミ「ええ、だからどこねぇ？」
鈴芽「え？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 440人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名稀ーなきー(プロフ) - RENAさん» ありがとうございます(_ _)更新頻度は低いですが、この作品を読んでくれると嬉しいです！ (2023年2月5日 22時) (
レス) id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
RENA(プロフ) - 今日、映画を見に行き全てにほれて夢小説で探しました。とてもおもしろかったです．そしてキュンッとしました (2023年2月5日 22時) (レス) @page47 id: a8ec99ccfe (このIDを非表示/違反報告)
名稀ーなきー(プロフ) - レナさん» コメントありがとうございます！頑張ります(ง •̀_•́)ง次の更新をお待ちくださいm(_ _)m (2022年11月25日 21時) (レス) id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 好きです。 自分のペースで頑張って下さい。 (2022年11月25日 21時) (レス) @page27 id: d245eefcba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名稀ーなきー | 作成日時：2022年11月20日 15時
