3日目 入れない扉、行くべきではない場所 ページ38
Aside
静かな住宅街は徐々に上り坂となり、そのうちに山肌に沿って左右に蛇行する道となる。
私たちは並んで走り続ける。
何台もの車とすれ違い、何人かの通行人に驚いた視線を向けられても、私たちはミミズから目を離せない。
いつの間にかダイジンの姿はないけれど、どうせ目的地は同じだ。
早く。一刻も早く、ミミズの根本へ。
両脇に立ち並んだ家々がぽつぽつと途切れ始める頃、黒い木々の向こうに観覧車のシルエットが大きく見え始めた。
ミミズはその場所から立ち昇っている。
鈴芽「『あの遊園地だ＿＿！』」
アーチ状の入り口の前には、雑草の絡んだバリケードが並んでいる。
脇の看板に
【閉園のお知らせ】
【40年間ありがとうございました】
という文字があるのが、暗闇の中にもちらりと見える。
草太はバリケードの下をくぐり抜け、私と鈴芽ちゃんはハードル走の選手のようにそれを飛び越える。
まるで巨人たちがずらりとうずくまり眠り込んでいるかのように、園内には様々な形の遊具が黒いシルエットとなって立ち並んでいる。
それらの足元は繁った草に埋もれ、地面のアスファルトはあちこちが剥がれひび割れている。
そして無言のままに眠り続ける遊具たちの向こうで、真っ赤な奔流が空に向かって伸び続けている。
鈴芽「＿＿観覧車が！」
メリーゴーラウンドの物陰にようやく膝をつき、息を弾ませたまま鈴芽ちゃんは叫んだ。
私が驚愕したように言葉を引き継ぐ。
『後ろ戸になってる！』
目の前の巨大な観覧車、その一番下にぶら下がったゴンドラのドアから、ミミズの濁流が噴き出ている。
誰もいに深夜の廃遊園地で、そのゴンドラの小さなドアだけが、そこだけ強風に吹かれているかのように孤独にバタバタと暴れている。
『！二人とも！あそこ！』
観覧車の頂上に、鳥のような影がとまっている＿＿＿あれは、
草太「・・・ダイジン！」
押し殺した声で草太が言う。
立ち昇っていくミミズの激流を、ダイジンはまんまるに見開いた瞳でうっとりと見つめている。
草太「A、鈴芽さん」
猫から目をそらさずに、草太が言う。
草太「俺はダイジンを捕まえて、要石に戻す。その間に二人は＿＿＿」
『ええ！』鈴芽「うん！」
鈴芽ちゃんは首にかけていた鍵をTシャツから出す。
愛媛での戸締まり以降、草太の鍵は鈴芽ちゃんが持っている。
鈴芽「ゴンドラの扉を閉めて、鍵をかける。やってみる！」
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名稀ーなきー(プロフ) - RENAさん» ありがとうございます(_ _)更新頻度は低いですが、この作品を読んでくれると嬉しいです！ (2023年2月5日 22時) (
レス) id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
RENA(プロフ) - 今日、映画を見に行き全てにほれて夢小説で探しました。とてもおもしろかったです．そしてキュンッとしました (2023年2月5日 22時) (レス) @page47 id: a8ec99ccfe (このIDを非表示/違反報告)
名稀ーなきー(プロフ) - レナさん» コメントありがとうございます！頑張ります(ง •̀_•́)ง次の更新をお待ちくださいm(_ _)m (2022年11月25日 21時) (レス) id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 好きです。 自分のペースで頑張って下さい。 (2022年11月25日 21時) (レス) @page27 id: d245eefcba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名稀ーなきー | 作成日時：2022年11月20日 15時
