【ぶい/ろく】美しい日曜【三/宅/健】

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なんで分かってくれねえんだろ。


剛が帰った後も、俺は独りでぼうっとボーリング場の様子を眺めていた。


俺は一緒にやめようって言ってんだ。
伝わってるはずなのに。あいつも同じこと思ってるはずなのに。


ずっと俺の近くにいたやつが、どこか知らないところへ行ってしまったようだった。






「けぇーんくん」




岡田の間延びした声だ。




「ねっむそう」

「あー？ねみいよ」





カミセン主演のドラマの撮影の休憩中、岡田は赤ちゃん返りをしたように、ずっと俺たちにくっ付いていた。





「ねえ聞いた？明日のMステ、オーバーだけじゃないんだよ歌うの」

「あーそれ昨日聞いたんだけど！なんで突然メドレーになるわけ？無理じゃん普通に」

「名前を売るチャンスじゃあんって、イノッチが」

「げっ。井ノ原くんがゆったの？」




離れた所で寝ていた剛が、半分寝ている顔で起き上がった。




「ちげーよ事務所だよ・・・」

「え？事務所の人が決めたの？」

「らしーぜ」

「なんで剛は知ってるわけー」

「坂本くんがゆってた」





岡田は大きな目をくるりと動かして、机に突っ伏す剛に近づいていった。
岡田が近づいてくるのに気づいた剛は、にやりと笑って避難する。




「なになになに、怖い怖い怖い」

「最近剛くん坂本くんと仲良いやんなあ」

「あーそれ俺も思ったぁー」





剛は俺たちを交互に見ながら「はあ？」と言う。




「ちょっと前までひっとことも喋らんかったのに」

「なあ！口を開けば喧嘩してさー」

「それはお前だろ健」

「俺よりお前が酷いよ。無視だもんムシ」





岡田が大口を開けて笑った。いつの間にか、明るい金髪からもじゃもじゃの茶髪パーマになっている。




「坂本くんすーぐ何でも決めちゃうからさ」





剛は笑って言った。俺はその時、あれ、こいつはこんなに笑うやつだったっけなと、ふと不思議に思った。こんなに大勢のスタッフがばたばたしているスタジオで、こんなに機嫌が良さそうに、明るく振る舞うやつだったっけ。





「明日のトークはお前な」





剛が俺を指差した。





「えーっ、ヤダよ」

「俺も嫌だもん」

「剛が大体タモリさんの横に座るじゃん！剛が喋ってよ」

「俺あいつ嫌いなんだよ」





近くにいた太った年増のスタッフが吹き出した。
剛は満足げにそのスタッフを見たまま続ける。





「うるせーくせに話つまんねんだよな」





岡田が声も上げずに大笑いしている。

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