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「なんだよ・・・それ」
俺は喉の奥からつかえるような声を出した。
剛は下を向いて、爪をいじっている。
俺は更に問い詰める。
「どーゆー意味だよそれ」
「お前は子供じゃねえよ。でも子供のフリしてる。こーしたら喜ばれるかなとか、こーやってやればイメージに合うかなとか、そーゆーのを考えてる」
剛は淡々とした口調だった。
「だからたまにあれって思う。こいつ大丈夫かよって。それが今日」
俺は言葉を失った。
剛に、こんなことを言われるのは初めてだった。
自分でそんな意識はしていない。
けれど、何となく見透かされている気分になった。
子供のフリをしてる。
俺が、子供の、フリをしてるだって?
「てか、なんでこんな客少ねえの?ここ」
剛は勝手に一人で喋りながら、台本をペラペラの鞄に仕舞った。
質問に答えない俺など気に止めない。
「あ、今日、日曜だからか」
俺はその時、剛になら言ってもいいかなと思った。
こいつはJrの時から一緒にいて、V6になってからもずっと一番近くにいた。こいつの考えてることは何となく分かるし、こいつは俺のことを一番よく分かってると思う。
「ごお」
俺が呼べば必ず振り向いた。
剛は俺の顔を見ると、金色の眉を少しひそめた。
昔はゲジゲジの極太眉毛だったくせに、と、何故か関係のないプチ悪口が、頭に浮かんでふわりと消えた。
「なに」
剛はがらがらの声で小さく答えた。
「俺もうやだ」
遠くで、また同じグループの客がストライクを出したようだ。酒に酔ったはしたない男女が目に映り、不快だった。
「やめんの?」
剛はまっすぐの目で聞いた。
「やめんの」って、なんだよ。やめられるわけないだろ。俺は頭の中で反論した。
「なんで?」
剛は立て続けに俺に問う。
主語はないし、声も冷たい。
「CD売れないから?下だけでやりたいから?」
「だって上は上だけでやれるじゃん。俺たちがわざわざ6人でやる意味ってあんの?」
自分でも驚くほど、すらすらと本音が出た。
ずっと言いたかった、でも誰にも言えなかった本音だった。
「それは何。人気的な?」
剛は真剣な目だった。
「そーだよ。それ以外にあるかよ」
爽快感と罪悪感が混じる不快な感情が襲った。
剛は俺から目を逸らさなかった。
「・・・」
嫌な空気だ。
オイルの臭いと酔っ払いの声が、俺たちを一層虚しくさせた。
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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね! (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました!それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ! (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね!とても嬉しいです。本当にありがとうございました! (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます!健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます!励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まお | 作成日時:2017年10月17日 7時