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"まだ子どもだから。"
俺の嫌いな言葉だ。
まだ子どもだから。まだ若いから。
分からなくて当然だよ。間違えていいんだよ。
なんだそれ。反吐が出る。
俺だってちゃんとしてる。ちゃんと仕事だって出来てる。何だって出来るのに。
「出来んのに！やらせないのはそっちだろってーの！」
「うっせえなー」
喚く俺の横で、剛がいよいよ台本から目を離して言った。
「わぁーったって。いいから、もう黙れよお前」
「分かってないだろ。なんで今日お前、俺の味方しなかったんだよ。お前だってそう思ってんだろ？」
「ああー？」
マネージャーに送ってもらい、俺たち二人は結局近場のボーリング場に来た。剛は撮影が近いから「やらねえ」とか言って、ボーリング場のソファーの上に座り込みやがったから、俺も横に座るしかなかった。
ボーリング場に来たのに、まわりの数組の客が遊んでいるのを見ているだけ。
剛は目を細めて俺を見た。触れ合いそうに近い足をばたばたさせて、呟くように言う。
「おめーと違って俺は空気読めんだよ」
「なぁんだよ、それ。今日の坂本くん、すっげえムカついた。俺のここんとこ、ぐって引っ張ってさ。加減を知らねえんだよ」
剛は乾いた声ではは、と笑った。
誰も俺たちに気づいていない。
遠くの方で、誰かがストライクを取った。喜び合っている男女数人が、雄叫びのような声を上げた。
「坂本くんはリーダーだからめんぼくがあんだよ」
「めんぼく？」
「あのー、あれ、顔ってこと」
「フーン」
オイルのにおいが鼻についた。
剛はうーんと伸びをした。
「ねっみ」
「お前さー。最近どーしちゃったわけ？」
「はあ？何が」
「なんかさあ、変わったよ」
「俺があ？」
ニット帽を深く被っているから、後れ毛の金髪がよく輝いて見える。
剛は面倒くさそうな顔で俺の目を見た。
「どのへんが？」
「全体的に」
俺の答えに不満をもったのか、剛はぐるりと上半身を捻った。バキバキと鳴る骨の音。
「俺からしたら、お前の方がよっぽど変だけどね」
剛はこちらを振り返って、何故かにやりと笑った。小さな口から、尖った八重歯が覗いた。
「俺え？どこが」
「なんか子供のフリしてるみたい」
剛はじっと俺をのぞき込む。
「やめれば？それ」
田舎の小さな古びたボーリング場。レーンから少し離れたところにある赤いソファーの上で、俺たちは奇妙な時間を過ごしていた。
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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (
レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね！ (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました！それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ！ (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね！とても嬉しいです。本当にありがとうございました！ (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます！励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2017年10月17日 7時
