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「俺の母さん病気でさ。統合失調症って言って、被害妄想とか奇行したりする、精神病。俺が小さい時だったから、あんま覚えてないんだけど」
剛はすぐに「やめろ」と呟いた。俺が『母さん』についてどこまで話すのか、この時もうすでに予想がついていたのだろう。
「この病気、薬で治るんだ。母さんも治った。でも母さんが治ったらすぐ、父さんは母さんを置いて出て行った。それから、横浜から母さんの実家のある香川に引っ越したんだ」
マネージャーやスタッフ、医師らに席を外してもらい、病室にいるのはメンバーだけになった。
五人はすごい顔をしていた。特に坂本くんと長野くんは本当に見たことのない、悲しみと悔しさが入り交じったような複雑な表情で、俺の話を聞いていた。
「それから母さんは人が変わったみたいに働いた。そのうち新しい男ができて、この人が新しいお父さんになるのよって言われて。でもその人とはすぐに別れて、また新しい男ができた。それからはずっとその繰り返しだった」
岡田は瞳をきらきら濡らして俺を見ていた。
その目があまりに美しくて、俺は直視出来なかった。
「母さんは男が出来ると俺をないものにした。食事も作らないし、金も渡さない。家にも帰ってこない。まるで俺がいないみたいに、俺のことを無視して生きるんだ。病気だよ。名前なんかしらないけど、男がいないと何にもできない、弱くて、狡い病気」
剛がとうとう俯いて、坂本くんに貸してもらった上着を頭から被って座り込んだ。その様子を見た岡田は、どうして良いか分からない様だった。
「でも男と別れると、次の男ができるまでの短いあいだは俺にすっごく優しいんだ。俺の名前を何度も呼んで、一緒に晩飯を食べた。俺は、母親が好きだった。もっと甘やかされたいと思ったし、もっと触れて欲しいと思った。だから、その短いあいだはずっと母親の傍にいた。母親のために朝新聞配達をして働いたし、母親の助けになると思ってジャニーズ事務所に入った。母親のためになることならなんでも喜んでやった。おかしいと思うかもしれないけど、俺は本当に、心から望んでやってたんだ」
重たい沈黙だった。
俺は頭痛も忘れて、夢中で話し続けていた。
「ある日の夕方、母さんが、俺を寝室へ招いた。晩飯もまだだったから、お腹空いたよって言ったら、服を脱ぎなさいって言うんだ」
坂本くんの目が、ぐらりとゆれた。
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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (
レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね！ (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました！それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ！ (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね！とても嬉しいです。本当にありがとうございました！ (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます！励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2017年10月17日 7時
