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「いやだ」





俺は坂本くんを思い切り睨んだ。
両目から、大粒の涙が零れた。





「謝れ」

「嫌だ」

「謝れ」





押し問答だ。坂本くんは絶対に譲らないという顔で言葉を重ねた。





「トニセンが顔で売れてねえから、裏の仕事を率先してるって?」





その言葉が、俺の心臓を突き上げるように刺し上げた。震え続ける携帯電話のバイブレーションが、冷たい楽屋に響き渡る。





「お前はそう言ったんだな」






携帯が鳴り止まない。その振動が、俺の心をせき立てた。





「その言葉がどんな意味をもつか、お前には未だわからないのか。それとも、わかっていて言ったのか。どっちだ」

「意味・・・?」





俺は鼻水を拭って坂本くんの目を見た。
切れ長の鋭い眼光が、俺の心を透かして読むようだ。





「そんなの、そのまんまの意味だよ。ずっとそう思ってたから今日言った。それだけだよ」

「・・・」





すると、坂本くんは眉間に皺を寄せたまま黙り込んでしまった。
坂本くんが黙るので、他の誰も声を発することが出来ない。

重たく、冷たい沈黙がまた訪れる。






「・・・何。なんか言えば。それとも何にもいうことないの?」

「俺、一抜け」






耳を疑ったが、それは確かに剛の声だった。
俺が振り返ると、剛は楽屋の一番奥にある鏡の前の椅子に深く腰掛けて、じっとこちらを見ながら言った。





「やってらんねえ。なんだよ、お前も、皆も。こんな馬鹿にみてえなグループ、今すぐやめるつってんだよ」

「剛」





井ノ原くんが、くるりと振り返って剛を見た。
剛はその瞬間立ち上がり、気だるそうな歩き方でこちらへやってきた。

俺の前に立つと、見たこともないくらいの目付きで俺を睨んだ。前に喧嘩した時とは比べ物にならない、俺に対する軽蔑を含んだ視線だった。






「何なのお前」

「剛・・・」

「マジ、きめえ」





剛は掠れた声でそう言うと、俺の横を通り抜け、がたんと大きな音を立てて楽屋を出て行った。井ノ原くんは少し経ってから、無言で剛を追いかけるように部屋を出た。その様子を子供みたいな顔で見つめる長野くんの、なんの罪もない綺麗な表情が脳にこびりつく。





「・・・俺、剛くん・・・」





岡田は坂本くんにすがるような目で、剛の後を追いかけたいとを示唆した。坂本くんは横目で、行け、と合図をした。


岡田も楽屋を出て行った後、俺は可笑しくて笑ってしまった。




これで終わり。全部、終わりなんだ。

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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね! (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました!それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ! (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね!とても嬉しいです。本当にありがとうございました! (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます!健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます!励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まお | 作成日時:2017年10月17日 7時

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