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それは例えば、俺たちはなんだって出来ちゃうってこと。
色んなものを犠牲にすれば、なんだって出来るんだ。
「今日行かねえの?ボーリング」
剛は眉間にしわを寄せたまま、ちらりと俺の方を見た。
「んー」
「なんで。飽きた?」
「うん」
「勿体ねえ。ボールあんなに買ったのに」
仕事が同じ時間に終われば、狂ったように俺と毎日ボーリング場に通っていた剛は、ある時からぱたりと興味を失ったかのように行くのをやめた。
俺は剛が行くから行っていたから、剛が行かないのであればボーリング場へ行く理由がない。高価なボールを何個も買ったのに、ぶっちゃけ超勿体ない。
「なんで突然やめんの?」
「いや何となく」
剛は俺に興味がなさそうだ。雑誌の撮影の合間、ソファーに寝そべって視線は手元の台本にある。
俺はつまらなくなってその場を離れた。
退屈しのぎに岡田をいじろうと思ったが、丁度ピンナップの撮影をしている。
最近ますます寡黙になる岡田は、カメラの前だと綺麗に笑えていた。
デビュー当時、全くの無名で人気も無いに等しかった岡田は、今やグループで1、2を争う人気メンバーになっていた。
「健〜。元気ないじゃん。コンサート疲れ?」
「いや、疲れてないよ」
「うそー。顔が死んでるぜ」
井ノ原くんが痩せた胸板のみえる深緑色のタンクトップ姿で、ふらふら歩きながら俺に近づいてきた。
「ドラマも決まったんだから、しっかりしろよ!」
「わかってるよ」
「あっ、なんだそれ」
井ノ原くんはふざけて俺の髪をぐしゃぐしゃにした。
俺が笑うと、井ノ原くんも満足げににやにやしている。
「はー、疲れる。お前と喋ると疲れるわ」
「なんだよそれ、そっちから絡んできたんだろ」
俺は笑いながら、ちらりと坂本くんの方を見た。
坂本くんはこちらなど気にもせず、黙々と何かの台本のようなものを読んでいた。けれど、今は何の舞台もやっていないはずだ。何してるんだろう?俺は気になって、坂本くんに近づいた。
「坂本くんなにしてんの?」
「え?ああ、いや、これは」
突然話しかけられて驚いた様子の坂本くんは、見ていた台本を俺に差し出した。
「えーっ、坂本くん、学校へ行こうの台本なんか読んでるよここで」
俺の声に反応した井ノ原くんが、にやにやしながら近づいてくる。剛もにやりと顔を上げた。
坂本くんは何故か呆れた表情で、離れて座る長野くんに目をくれた。
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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね! (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました!それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ! (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね!とても嬉しいです。本当にありがとうございました! (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます!健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます!励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まお | 作成日時:2017年10月17日 7時