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＊
「剛。プープープークランクアップしたんだね」
「あー昨日ね」
「お疲れ様」
長野くんが剛と差し入れの和菓子を食べながら、カミセンのドラマの撮影がクランクアップしたことを話している。
岡田は昨日、撮影が終わったその足で床屋へ行き髪を切った。デビューしてすぐの頃に比べると、随分大人びた顔つきになった。元々の性格もあって、必要以上に俺たちと話すことが少なくなっていると感じる。
「健もおつかれー」
ピン撮りを終えた井ノ原くんが、にこにこ笑いながら俺に向かってそう言った。
「へーんなドラマだったよな」
剛が屈託のない顔で笑う。
俺は笑顔で「うん」と答えた。頬が引きつったけど、普通に見えたはずだ。
岡田が無言で近づいてきて、お菓子を頬張る剛の髪の毛をじっと見た。剛はしばらく放っておいたが、ついに噴き出した。
「お前何、ほんと。カミセンのコンサートん時からマジで変」
「剛くん髪の毛染めた？」
ぼそぼそと喋る岡田。剛は眉をひそめた。
「いや？」
「もっと明るかった・・・金髪に近かった気がして」
「照明じゃない？」
長野くんが天を仰ぎ、オレンジに近い色で光る蛍光灯を親指で差した。
岡田は全然納得してなさそうに「フーン」と言うと、そのまま剛の横に座ってじっとしていた。
「けんちゃーん。どーしたんだよ？全然元気なくなっちゃって」
俺の隣に座った井ノ原くんが、俺の肩に手を回して、いつもの明るい声で言った。
「ええー？」
「最近ずっとじゃあん。なんかやなことあった？」
「えーないよそんなの」
今度は自然に笑えた。井ノ原くんは俺の顔を見ると、くしゃくしゃの笑顔で笑った。
「じゃーなんで全然喋んねんだよっ」
「喋ってるじゃんホラー」
「あーあー井ノ原」
すると、長野くんが突然井ノ原くんの名前を呼んだ。
きょとんとした顔で振り返る井ノ原くん。長野くんは、右肘を直角に曲げて前に出した。
「肘、肘。餡子ついちゃうよ」
「えっ？」
井ノ原くんの左腕のすぐそばに、大量のお萩が入った重箱が置いてあった。井ノ原くんの衣装に餡子が付いてしまうことを、長野くんは危惧したのだ。
「お萩に申し訳ないからね」
「あ、俺の心配ではなく」
「はは」
目線を台本に落としたまま、剛は乾いた声で笑った。
奥から坂本くんが歩いてくる。ピン撮影が終わったのだ。次は、俺の番だった。
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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (
レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね！ (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました！それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ！ (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね！とても嬉しいです。本当にありがとうございました！ (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます！励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2017年10月17日 7時
