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「けぇーんくん」
低く響く岡田の声がした。
くるりと振り返ると、衣装に着替え終えた金髪の岡田が、にこにこしながらケータリングの焼き鳥を5本も持ってやってきた。
「たべる？」
「焼き鳥？いーらね」
「美味しいのに」
岡田はもぐもぐ焼き鳥を頬張りながら、その鋭い眼光で俺を見た。
俺は焼き鳥から垂れそうなタレが気がかりで仕方ない。
「岡田ちゃんと前で食えよ。衣装に垂れるよ」
「ええ？」
岡田はアホっぽい顔をして、焼き鳥を持つ手首をひねった。その瞬間、焼き鳥からタレがぽとりと床に落ちる。岡田は大口を開けて笑った。
「ああー。ごめんなさい、横アリの掃除の人」
「あっははーだからゆったのに」
俺は笑って、ちらりと楽屋の大きな鏡を見る。
明るい髪色の若い男が二人、ぎらぎらのド派手な衣装を着て、広い楽屋のソファーに寄り添って焼き鳥を食っている姿。傍から見ればちょっと変かな。
俺たちのまわりではスタッフたちが慌ただしくあっちへこっちへ走り回っている。
でも、こっちの方がおかしいよね。
俺は心の中で呟いた。俺たちのコンサートなのに、スタッフの方が500倍忙しそうなんて。俺たちの知らないところで、俺たちの知らない仕事が進められていく。俺たちの知らない決めごとがあって、みんなそれを守るために動いている。主役の俺たちは、まるで子守でもされてるみたいに、ただ機嫌を取られ、コンサートのセトリを丁寧に説明されて、今は開演までただ待っているだけ。詳しいことなんかなんにもしらない。どっかの国の、お姫様にでもなったみたいだ。
「ごーは？」
「剛くん？」
岡田は目をまん丸にして答えた。
「知らんー」
「お前それ、どこで着替えたの？」
「前の楽屋」
「荷物置いてる？」
「そう。でも剛くんいなかったで」
岡田はフワフワの羽がついた衣装を着づらそうにしていた。何をするにでも羽が邪魔をしてきて、俺もこのたぐいの衣装は嫌いだった。コンサート中、汗をかいたらはりつくんだよ、これ。でも何故かファンの子は好きだから、これを着るしかないんだよね。
「あいつ逃げたな」
「あっはは」
岡田は笑った。
「逃げるわけないやん」
デビューしてたった数年で、V6は結構有名になった。
特に俺たち『カミセン』は、すごい人気だったと思う。こうやって、度々コンサートを行うことが出来たからね。
その中で、俺は少しずつ、あることに気がついていく。
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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (
レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね！ (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました！それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ！ (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね！とても嬉しいです。本当にありがとうございました！ (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます！励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2017年10月17日 7時
