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長野は井ノ原の入れた完璧な温度のお湯に浸かりながら目を閉じる。遠くで、随分賑やかな生活音が聴こえてくる。
「長野くん本読んでー」
「いいよ、なんの本？」
「マジックツリーハウスのー、ポンペイ最後の日」
「渋いな。岡田、岡田もほらおいで。寝るよ」
剛と健も、元々長野が拾ってきた戦争孤児だった。ある日、長野が井ノ原と配給の小麦粉と砂糖を貰いに出かけた時、剛と健は物陰から出てきて井ノ原を果物ナイフで脅し、配給チケットを寄越せと迫った。砂埃に汚れた服を着て、薬漬けにされたような爛々とした表情をして。長野は、あの時の二人の目を今でも忘れられない。
「長野くん。俺は寝なくても大丈夫なんだよ。ごはんも食べなくてもいいし、お風呂もいいんだよ」
「しってるよ」
長野は嫌がる井ノ原を押し切り、二人を研究所に連れて帰った。坂本は膿だらけの剛健と笑顔の長野を見るとまた始まったなとめんどくさそうに笑い、二人を風呂に入れた。
「いい、岡田。それでも寝るの。お前は人間なんだから、人間らしい生活をしないと。飯も食って、風呂も入れ」
長野は本棚から剛と健がお気に入りのマジックツリーハウスシリーズを取り出し、昨日の続きから読み出した。川の字で寝る剛健と岡田の間に入りものの十数ページを読むと、剛と健はあっという間にすやすやと眠り出した。
「俺、AIだよ？長野くん」
長野が本を仕舞うと、暗闇の中岡田が目を開けて言った。
「しってるよ」
剛と健が幼稚舎から帰ってくる道ばたで脳死状態の赤ん坊を拾ってきたのは、剛健がうちに来てから二年ほど経った頃だった。坂本が玄関を開けると泣きながら赤ん坊を抱える健と、長野を名を叫ぶ剛の緊迫した顔がそこにはあった。
「もうすぐなんだ。もうすぐ出来るはずなんだ。そしたらまた国家規定科学者に認定されて、お金がたんまりもらえるはずさ。そしたらこんなクソ暑くて危険な地球なんかとすぐオサラバだよ。お前もきっと、『こころ』を手に入れられる。ようやく人間に戻れるよ。ごめんね、こんなに長い間待たせて・・・」
「・・・長野くん、タンパク質とビタミンと微量元素の摂取が大幅に不足してるよ。摂取カロリーも成人男性の平均の半分だよ。それと肺機能に大きな疾患があるよ」
「うん」
岡田は長野の額に手を当て無表情で言った。
「しってるよ。だから急がないとね」
長野は暗闇の中で笑った。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
