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「イノッチ、おれ、『こころ』があるよ」
岡田は目尻を細め、にっこりと笑った。細めた目から涙がまたあふれた。
「長野くんが作っておいてくれた『こころ』のインストールができたんだよ。おれ、だから今泣いてるんでしょ？嬉しいから・・・イノッチにまた会えて、嬉しいから」
井ノ原は震える声で「そうだよ」と言うと、ゆっくりしゃがむ岡田に合わせて、しずかにその身体を抱きしめた。涙が次から次へとこぼれて、そのたび健が袖で拭いてくれた。
「ずっと会いたかった・・・みんなに会いたかった・・・」
岡田は泣きながら言った。井ノ原も泣きながら「俺もだよ」と言った。
「俺もずっとみんなに会いたかった。俺が目を離したからこんなことになっちゃったんだと思うと、みんなに本当に申し訳なくて、自分が不甲斐なくて・・・」
剛が照れながら涙をぬぐい、「ちょっと、すげー顔なんだけど」と井ノ原を笑った。井ノ原は涙で顔をぐちゃぐちゃに濡らし、「だってぇ、みんな生きててほんとによかったんだよォ」と泣き叫んだ。
「イノッチ、看守が向かってきてる！感動の再会もそこまでや、一旦スペースシャトルに乗るで！」
光一がはきはきした声でそう言った。痩せこけた収容人たちの合間をぬって、光一、ツヨシ、井ノ原、剛、健、岡田の六人はスペースシャトルへ走っていく。
「太一くんたちも、連れていけたらなあ・・・」
「無駄やで」
井ノ原が鼻水をぬぐいながら言うと、すっかり泣き止んだツヨシがにやりとして言った。
「あの人らは茂くんナシではどこも行かん。今晩にでも病院侵入してさ、赤十字の飛行船に乗り込んで地球に帰ったりしそうやけどな」
「はは、逞しいな」
「わからんでぇ」
ツヨシは揺れる瞳でスペースシャトルの窓から銀世界を見る。井ノ原も席について、シートベルトを締めた。曇った窓から見えるのは白い光と薄汚れたバラックだけだ。
「太一も松岡も、よう死なんよ。必ず茂くん連れて、地球へ帰ってくる」
健は剛の肩に頭を乗せ、ゆっくりと目を閉じる。井ノ原の横に座る岡田は、静かに木星の地を見ている。
スペースシャトルがゆっくりと空へ舞う。あんなに見慣れた銀世界が、どんどん知らないものになる。
「さよなら、木星」
井ノ原は小さくなっていく銀世界を見ている。ここでどれだけの人が死に、どれだけの人が苦しんだろう。
さよなら木星。
もう戻ることは無い。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
