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井ノ原は左手をぐっと握り、静かに開いた。皮膚の移植手術を受けたところだけ、肌の色が違う。
木星がこんなところだとは思わなかった。ここへ来た時、皆が口を揃えて言った。しかし十年が経つと人は慣れる。人間が下僕となり、AIが統治をするこの惑星は確かにおかしい。おかしいが、それをおかしいと唱える人間がいなくなった。
井ノ原は真っ白い銀世界の向こう側へ行きたかった。そうすれば行方知れずの弟達や、尊敬する兄達に会える気がした。
「それ、はいきゅーの大豆とぉ、かりんとう。イノッチ食べて」
「うえっ、こんなに、俺に？いいの？」
「いいよ。食べれる時に食べへんと」
ツヨシは鉄格子の奥から、袋に入った配給の食べ物をこちらのブロックに投げ入れた。髪を坊主に刈ったツヨシは、城島と同じ色の収容服を着ていた。
「ありがとぉー。めっちゃ助かるわぁ」
「うん。今朝な、太一くんが茂くん探しに来よったよ。だいぶ職員に聞いてまわっとって、おらんと知ったら帰っていったけど」
「なあ、茂くんいつ移動になったか知ってる？松岡もそれ聞いて随分落ち込んじゃってさ」
「わからん。茂くんと別棟やったから・・・風邪引いたねんって言っとったのは覚えてるけど、それも2週間は前やな」
「やっぱり、病院へ行ったのかな？」
「それやったら、もう帰ってはこれん病気やね・・・」
ツヨシは遠くを見ながら言った。雪山から小型の鹿が一頭顔を出している。
「なんか・・・最近俺ももうすぐなんかなって思うねん」
「な、何を言ってんの」
「だって自分の身体のことやし、自分が一番よく分かる。お迎えだって来とるみたいやしね、アレ、あんなちっちゃい鹿・・・」
ツヨシは「アレ？」と目をしかめた。
「なんか鹿に見えへんくない？」
「な、何？」
その時、反対側の遠くで飛行機が着陸する音がした。ツヨシはぱっと振り返り、「エンキューや」と目を輝かせた。
「えんきゅー？」
「援護配給。まだ食べ物貰えるで。イノッチも一緒に行こ、反対や」
ツヨシと井ノ原は鉄格子を挟み、同時に走り出した。雪が重くて体力が奪われる。時おり軋むように痛む左半身に鞭を打ち、滑走路の方まで来た。
「・・・な、なんやこのおかしな機体」
滑走路に着陸した飛行機、いや謎の飛行物体は、明らかに赤十字軍のものではなかった。禍々しい発光色に、かなり前衛的なデザインの機体。
井ノ原とツヨシは鉄格子を挟んで身を寄せ合った。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
