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国分と松岡は井ノ原と昔からの馴染みだった。
二人は『ながのAI研究所』があった同じ町内に住んでいた。みな戦争の時代に生まれ育ったので、揃って貧乏で、学校に行く暇も金も無かった。そのため井ノ原はよくこの二人と道ばたで遊んだ。二人は指定暴力団のグループ企業の二代目社長だった城島に雇われていた。仕事内容はよく知らないが、とにかくこの二人はよく口を揃えて「城島には頭が上がらない」と言っていた。
「やさしんだよね、あのひと」
国分は赤十字マークの付いた包装を破り、中から現れた栄養満点の乾パンをかじった。
「火星だとヤクザは捕まるからって、わざわざ木星行きの切符、アレってたぶんすげー高ぇんだよ、どっかから買ってきてさあ、てめぇより先に血も繋がらない俺たちスペースシャトルにぶち込んで『落ち着いたら手紙でも書いてや』って・・・」
井ノ原は静かに話を聞いていた。雪の中に身を隠し、乾パンを食べながら国分は言った。
「あん時は泣いたね。スペースシャトルをどうにか壊して、地球に帰るーとか言って、年下の松岡に止められて・・・まあ着いたらこんな地獄とは思わなかったけど」
「・・・茂くんに会えたの？その乾パン・・・」
「・・・バラック移動になったって言われたけど、真実かどうかも怪しい。これは知らんおっちゃんから貰った。近くに人間専用の病院があるらしいから、そこへ移動させられたんじゃないかって言ってたけど・・・そんな所へ行ったら、たぶんもう・・・」
国分はそれきり黙って、昼休みのベルが鳴ると仕事へ戻っていった。
「・・・」
井ノ原はベルトコンベアから手を離し、薄汚い小さな窓から外を見る。
古い建物が軋む音。埃くさい室内。
外は対照的に明るい。太陽光が雪に反射して、窓からは真っ白い光があふれている。
井ノ原はあの日、城島を見失った松岡と共に防空壕を出てすぐ、あの爆風に巻き込まれた。
松岡は物陰に丁度隠れていて殆ど無傷だった。井ノ原は左半身にたくさんガラスの破片が突き刺さった。大量出血で、意識が薄れていく。眠くなっていく頭の中で、幼い弟達が井ノ原の名前を叫びながら泣いている声ががんがん響いている。
松岡は気絶した井ノ原を抱いたまま荒廃した外へ這いずり出た。火と死体まみれのいつもの道ばたに、『火星疎開保険』や『あんしん木星サポート』の簡易スペースシャトルがうようよ飛んでいた。そのうちの一つに、号泣する国分が乗っていたのだった。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
