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火星の夕焼けは青いんだってーー。
地球に居た頃、子供だった健が光一から受け取った絵葉書を見て楽しそうにそう言っていた。
火星にはなんでもあると思っていた。幸せな場所なのだと思っていた。爆弾は飛んで来ないし、配給チケットもないのだから。
火星に着いた時に見た夕焼けは、たしかに青く美しかった。ただし昼間は赤黒い空に灰色の雲が広がっていて、火星にいる人間はいつもいらいらしていた。それに、一緒に来れたのは健だけだった。たった二人で、泣きながらこのアパートまで歩いてきた。
野菜も豚も暮らせない貧相な土地で、AIも役立たずのごみに成り下がっている。まるで何世紀も前に戻ったかのような後進的な暮らし。金を稼ぐにはなんでもしなければならなかった。火星は、剛にとってとても思い描いていたような幸せな場所ではなかった。
「ごぉ」
その日の夜、健は剛の寝室にやって来た。地球から持ってきたへんてこな抱き枕を片手に抱いていた。
「俺、明日木星に行く。光一くんの荷物の中に潜り込んでいく」
「・・・そんなことしても見つかるよ」
「そうでもしないと行けないもん。一度だけ井ノ原くんのスマホが木星で使用された形跡があるって保険会社の人が言ってたの、俺すごく分かるんだ。ああ、井ノ原くんだったらあの日火星行きのスペースシャトルに乗り遅れても、誰かが木星に逃げる時に紛れて一緒に行ったんじゃないかなあって」
「やめとけよ。光一くんに迷惑だから」
「光一くんいいよって言ったよ」
「お前・・・」
健は暗闇の中、じっと剛を見つめた。その目は暗く深い。
「俺自分の目で確かめたい。自分の目で確かめるまで、みんなが死んだってまだ思いたくない。剛もそうでしょ？生きててほしいでしょ？」
「・・・」
剛は健の揺れる瞳を見た。
「・・・期待するのなんか嫌なんだよ。ホントに死んでたのが分かったら、お前また泣くだろ」
「泣くよ。それでも知りたいんだ。俺人間だもん。心があるんだ。井ノ原くんに会いたい。会って話したい。十年、こんなことがあったよ、こんなふうに生きてたよって、話すこといっぱいあるんだもん・・・」
健は強くて美しいと、剛はいつも思う。泥まみれで一日中働く健を、剛はばかだと思う一方で美しいとも思うのだ。
「一緒に行こうよ剛」
健はにこりと笑う。剛はため息をついて、面倒くさそうにベッドを降りた。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
