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「え、そーなの」
剛はノスタルジックなキムチ鍋を食べながら目を丸くした。昨日の客のせいで全身がかちかちに痛かったが、長野のキムチ鍋を食べていると少し楽になったような気がした。
「うん。俺見たもん」
健は口いっぱいにご飯を詰め込み、もぐもぐと食べながら言った。地球のリスによく似ていた。
「ねえ、だから地球に帰ろうよ。長野くんもきっと生きてるよ。俺信じてる。坂本くんもきっと長野くんと一緒にいるよ」
「うっせえな。みんな死んでんだよもう」
剛はぴしゃりと言った。健は愛らしい大きな目をぐらりと揺らした。
「長野くんが死なないと俺たちの火星疎開保険が適応されなかったんだから。お前、三人が車でどっか行くの見えたんだろ？それじゃあ爆弾が落ちた時、岡田も坂本くんも、みんな一緒に死んだんだよ。あの日、生きた人間なんか誰もいなかったじゃん。いたか？誰か、動いてた人間。あの日、あそこに」
「い、なかったけど・・・」
「爆弾は東京のど真ん中に落ちたんだ。東京のど真ん中で暮らしてたみんなが死なないわけないだろ。俺たちはほんとにたまたま生き残っちゃったんだ。みんな死んだ。十年も経ったのに、まだそんなこと言ってんのかよ」
「だ、だって・・・」
剛は言い終わってから、しまったと思った。また強く言い過ぎた。健は純粋なだけなのに、この手の話になると剛はいつも当たり強くなってしまうのだった。
「いや、だから・・・光一くんがツヨシを探しに行くのとは訳が違うって話だよ。四人はもう死んでんだから、地球に行ったって木星に飛んだって、会えるはずねえんだから・・・」
剛はしどろもどろに言葉を繋げたが、がっくり落ち込む健にかける言葉はこれ以上見つからなかった。健は箸を置いて、キムチ鍋を見つめ続けた。その目は暗く深い。
「・・・分かってるよ。みんなもういないことなんか」
剛も箸を置いた。窓の外はすっかり青色で、夜がやってくるのを知らせている。
「いないに決まってんじゃん。ねえ、だってあんなに近くにいた井ノ原くんだって、全然見つからなかったんだよ。死体もなかったんだよ。爆風で吹き飛んで、ばらばらになっちゃったんだよきっと。痛かったし怖かったと思うよ。俺たちのことスッゴイ心配したと思うよ。ねえ、剛！きいてんの！」
健は剛に箸を投げつけた。汚れた床に、オレンジ色の箸が二本転がる。剛は下を向いたまま、湧き上がる感情に堪えている。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
