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『俺嬉しいんだ岡田』
長野は岡田の腕の中で、ゼーゼーと息をしながら言った。
『こんなことあるなんて思わなかった。俺の夢が叶ったんだ』
「どんな夢？」
夜間病院の看板がもう見えている。岡田はすべての信号を無視し、立ち往生する車と車の間を抜けて走っていく。車で逃げるのを諦めた人々が、続々と共用シェルターに潜っていった。
『岡田のこころを完成させたかった』
長野はゆっくりと空を見上げた。真っ暗で何も見えないが、耳をすませば微かに飛行機の音が聞こえるような気がする。
『おまえに人間になって欲しかった。それがもうすぐ叶うんだ・・・』
「どうすれば長野くんの夢が完成するの？」
『いい、岡田、よく聞いてね』
岡田は病院の急患入口へ飛び込んだ。シェルターに駆け込むナースを捕まえ、岡田は長野を抱いたまま地下の対核病棟へ向かう。
「長野くんついたよ。もう大丈夫だよ」
『まずね・・・研究室の俺のパソコンにai346.heartって書いてあるロムを入れて欲しいんだ・・・』
『急患です！通ります！』
『それから・・・パソコンを再起動して・・・そのロムをそのまま・・・インストール・・・して・・・』
『急患です！』
長野は簡易ストレッチャーに寝かされ、空襲に怯える患者たちの間をすり抜けて緊急オペ室へ運ばれていく。岡田も横に付きながら長野の冷たい手を握り続ける。
『それで・・・指紋を・・・登、録・・・』
「長野くん」
その時、シェルター内がぐにゃりと揺れた。次に大きな縦揺れがガタガタと襲う。叫ぶ患者。止まるストレッチャー。逃げまとう医者やナース。
「長野くん！」
『登録して・・・そしたら・・・あれ、坂本くん・・・』
長野は全身の力をゆっくり抜いていった。ビュービューという呼吸音が数回したのち、目を開けたまま動かなくなった。
シェルターはまだ揺れている。子供の泣き声があちこちから聞こえてくる。
長野は死んだ。岡田の脳にはそうインプットされた。
偉大な科学者であった長野の父が設計した研究所は、核爆弾のエネルギーにも耐え得た。岡田はぼろになった研究所に帰ると、それからまたいつも通りに生活を始めるしかなかった。朝8時にコーヒーを入れ、15分のリニアに間に合うように駅まで向かった。
それから十年、研究所に帰ってきた者は一人もいない。岡田は十九歳になった。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
