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「だって、だってさっきまでそこに・・・松岡くんと・・・」
健が泥と涙でぐちゃぐちゃの顔で言った。剛は黙って井ノ原の名を呼び歩き続けた。
「井ノ原くん！」
人が死んだ臭いと、ものが燃える臭いと、あともうひとつよく分からない臭いがした。それがひどく臭くて剛は堪らなかった。もう日本には、地球には、住む価値がないようなきがした。
「おい君たち、たすけてくれ」
がらがらに掠れた小さな声が足元から聞こえた。剛と健は思わず飛び退く。血塗れの高齢の男性が、瓦礫の下から顔と左腕だけを出していた。
「引っ張ってここから出してくれないか」
「・・・健、そっち持ちな」
剛は男性の頭と肩を、健が左腕を持った。せーので引っ張る。瓦礫と身体の間に隙間があるので抜けそうだ。男性の身体が少し動く。
「いけそうだよおじさん。がんばって」
「いくよ、せーの」
男性の胸あたりまでが見えてくる。大量出血のせいか男性の身体はひどく冷たい。
「せーの」
「・・・え」
健の顔が固まる。その瞬間、「うわああ！！」と甲高い悲鳴を上げて男性の腕を放り投げた。
「どーしたんだよ、健！」
「この人死んでるっ。胸から下、身体ないっ」
「え」
その瞬間、男性の耳と口から赤黒い血と透明の粘り気のある液体がどろっと零れた。剛と健は身体が凍っていくのを感じた。男性は二度と起きなかった。
「・・・ここから出よう」
剛は呟くように言った。
「井ノ原くん、たぶん長野くんたちを迎えに行ったんだ」
「じゃあ、外にいるの？」
「きっとな。だってここに居ないんだ。4人を探しに行こう」
「外ってどうなってるの？核が落ちたんでしょ。きっとこの中より・・・」
「危険だから行かないって？」
剛は泥のついたシャツで、泥まみれの顔を拭いた。
「俺たちどうせもうホウシャノーだって浴びてんだ。いつ死ぬかわかんないんだぜ。それなら最後にあいつらに会ってから死んでやろうよ。きっとすげー泣くぜ、みんな」
「あはは、想像できる」
剛と健は手を繋ぎ、壊れたシェルターの階段を上って開きっぱなしの扉から外へ出た。むっとした風とさっきの異臭が鼻をつく。
「・・・なんだ、これ・・・」
二人は絶句した。
そこには何も無かった。
爆弾が落ちる前にはあったのだ。剛と健が、住んでいた街が。
それが無かった。まっさらの、まるで生まれたばかりの更地の街に死体と瓦礫が燃え燻っている。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
