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怒りで身体がぶるぶると震えた。片手で原稿を奪い取り、もう片方の手でツヨシの肩を思い切り押し飛ばした。バランスを崩したツヨシは床に倒れ込み、万年筆のインクと白紙の原稿用紙が派手にぶちまけた。
「何すんだよ！」
ツヨシはひどく混乱した様子で叫んだ。俺はツヨシに馬乗りになり、ぐちゃぐちゃになった原稿用紙を顔に近づけてみせた。
「こっちの台詞だよ。なんなんだよこの作文は」
「何ってそりゃあ、『己の生涯において意味を成す物』。このテーマに沿って書いたただの作文だろ」
「ふざけんな。なんで俺の弟のことが書いてある」
「だってそりゃあ、お前の大切なものって言ったら家族なんだろ？前に授業で津々浦々話していたじゃないか」
「それとこれとは別だ。よりにもよって、弟が作文の題にならなくたっていい。おまえ知ってるだろ」
我を忘れたように叫ぶ俺の顔を見て、ツヨシは二回静かに瞬きをした。そして、口角をゆっくり上げクククと声をあげて笑った。
「フフ、知ってるよ。俺はな、お前のこの顔が見たくて書いたんだよ。『弟の水泳パンツ』・・・どうだ、人の女を寝とったやつにピッタリの作文の題だと思わないか？」
馬乗りにされたまま、ツヨシはひっくり返って大笑いした。俺は原稿を一枚一枚丁寧にやぶった後、笑うツヨシの胸ぐらを掴んで一発殴った。
ツヨシはすぐに顔をこちらに向けた。次の瞬間、顔に物凄い痛みが走り、全身に稲妻が駆け巡ったような感覚がした。殴られたと理解した時には、床に突っ伏し逆にツヨシに馬乗りにされていた。鼻がジンジンと熱く燃え、鮮血が汚れたタイルの床にぼとりと零れ落ちた。
「寝とったなんて心外だ。俺がアヤと親しくなったのは今年の夏からだ」
「ウソをつけ。お前の口から出る言葉なんて嘘八百に違いない」
「嘘なことがあるか。アヤに確認してみるんだな」
「お前、いつまでアヤの恋人気取りなんだよ。最初から相手にされてないくせに、まるで負け犬の遠吠えだな」
アヤに恋人ができたこと、そして俺がアヤのことを密かに好きだったことをなぜツヨシが知っているのかは分からなかった。ただその時俺は無性に腹が立っていて、何も冷静に考えられなかったんだ。ペンシーを放校になること、ミスター・ヒガシに侮辱を受けたこと、アヤを失ったこと、そして腹いせに弟を作文の題材にされ好き勝手に書かれたこと。すべてが最悪だった。そして俺は、ここでの現実に限界を見据えた。
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
