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『ゴウ。こっち来いよ』
ケンがにかっと三日月目で笑い、俺のことを呼んでいる。
青々しい草木が生い茂る広場を抜けると、霧で覆われた大きな古城が見えてくる。ケンは俺の手を離し、城壁を登り出す。
『ケン、危ねえよ。帰ろうよ』
『なんだよお前ー、ビビってんのかよ』
ふとまわりを見ると、シカゴの家の近所に住んでいた子供たちもたくさんいた。みな小綺麗な格好をしていて、ケンに続いて城壁に手をかける。
『オメー、サカモトくんに怒られても知らないからな』
『サカモトくんはこんな所まで来ないよ。引きこもってんだし』
『お前が怪我したら俺が怒られるんだっつーの』
俺は揉める子供たちを天から覗き込んでいる。そう、サカモトくん。俺たちは長男のマサユキのことをそう呼んでいた。
『あっ、あれは、ニュージャージーの兵隊かなあ？』
『えっ？』
ケンが城壁を四半分ほど登った所で、真上を見上げて指を差す。耳にこびりついたあの飛行機の飛ぶ音。見慣れた黒い星印の爆撃機が、灰色の空を掠めていく。
『・・・ケン、降りろ』
『えっ？』
『早く降りろって！』
3機の爆撃機は大きく旋回し、古城の近くに現れた。すると、背後から青紫色の稲妻のような光が差す。
遅れて、バチバチッ、という強い電気が走るような音がした。振り向くまもなく、その青紫色の電気は俺の立つ半径数メートルを囲んだ。
『ケン！降りろ！早くこっちに来い！』
電気は俺の行く手を阻む。ケンは高さを気にして城壁から降りるのを拒んでいる。走って逃げる子供、恐怖で動けなくなる子供、城壁から落っこちて見えなくなる子供ーー。
『クソっ、なんだよこれぇ！ケン！』
爆撃機から小さな点がぽつぽつと落ちてきているのが見えた。あれは、爆弾だ。何度も見た、火炎弾。
『ケン！！』
古城が燃える。霧の中で紅く光り、熱風と爆音を鳴らしめらめらと燃え盛っていく。
『クソっ、何なんだよ、離せよ！！』
振り返ると、離れた所に背の高い青年が見えた。青年は立ったまま両手を前に突き出していて、そこから青紫色の電流が流れてきている。
爆撃や瓦礫が熱風で四方八方に吹き飛ぶ。青い電流で護られている俺の近くには、それらは一切届かない。
『ふざけんなよ・・・くそ・・・』
降りかかる爆撃が美しい放物線を描いて、石の古城に落ちていく。なるほど、星が降るとはよく言った。燃える星が落ちていく。俺の弟を殺している。
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
