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「えっ・・・？」
心臓がどくんと波打った。
「な、何だって、オカダ」
「ほら、掴めそう」
オカダはくうに向かって手を伸ばし、見えない何かを掴もうとするだけだった。
俺は冷や汗が吹き出し、全身ががたがた震えた。これは、ケンが死んだ時と同じだ。全く同じことを、いま、オカダが言っている。
「オカダ、オカダ。俺の目見ろ。オカダ」
「ゴウくん大変や。ビルが壊れる」
その瞬間、俺はオカダを抱き抱えたまま砂浜を走り出した。
《ナガノくん！》
俺は心の中で叫んだ。
《ナガノくん！助けてよ！》
抱き抱えられたオカダは身体をよじり、見えない星を捕まえようとする。俺はオカダを抱え直し、ひたすら心の中で叫ぶ。
《お願いだ！出てきてよ！オカダがやばいんだ！》
オカダの目には俺はもう映らなかった。涙が溢れ、空襲の後灰色の街を走った記憶が一気にフラッシュバックした。
《お願いナガノくん、助けて！》
落ちていた枝木につまづき、俺はバランスを失った。とっさにオカダを抱きしめ、背中から転んだ。
「いって・・・」
顔を上げたそこは、ポートランドではなかった。
夕方だったはずの太陽は真上にある。鳥や生き物が鳴く声がして、俺はようやく森の中にいることに気がついた。枯れて散った落ち葉の上に俺たちは座っていた。
「え、ここは・・・」
オカダが大きく欠伸をした。その様子に目を取られていると、落ち葉を掻き分けて歩く音が近づいてきた。
「あ・・・」
心臓がどくどく、大きく鳴っている。
その人物は俺たちの前に現れるとすっとしゃがんだ。
「呼んだね」
俺は口を開けたまま黙っていた。人物はにっこり笑った。
「ナガノくん・・・」
「大丈夫、落ち着いて。今看るから」
ナガノくんはそう言うと眠り込んだオカダを抱き抱え、額をオカダの額と合わせた。その面から、薄い光が発せられる。昔、ナガノくんが魔法を使う時に見たあの光だ。
「ナガノくん・・・」
「・・・うん、オカダは寿命が近いんだ」
ナガノくんの変わらない顔が懐かしかった。俺は身体に力が入らず、涙が止まらなかった。
「どうしよう、どうしようナガノくん・・・」
「大丈夫、落ち着いて。いますぐ死んでしまうわけじゃない」
「ど、どうやったらオカダは死ななくなる？ねえ」
「・・・ひとつだけ方法がある」
泣きじゃくる俺の頭を撫で、ナガノくんは呟いた。
「ゴウの寿命を半分渡すんだ」
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
