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「・・・だから何だって言うんだよ？」
ヨシヒコは俺にジャンヌの銃を突きつけたまま睨み返した。
「同胞だから賛同できるってか？ふざけんな。俺らのことを甘く見るんじゃねえ」
「ヨシヒコ。彼のことを脅すのはやめなさい。・・・ヨシヒコは僕の家で雇っていたんだ、坊や」
「下働きですか？」
ひどく苦しそうな表情のコウイチを、ヨシヒコはきっと睨みつけた。
「んな大層なものじゃねえよ。ドレイだよ、ドレイ」
ヨシヒコは真っ暗な何も映らない目をして言った。
「俺と家族はこいつんちに買われてたんだ。俺は物心ついた頃からこいつんちのドレイだった。わかるだろ。こいつの父親、つまり現大統領自体が人種差別主義者なんだよ。国のトップがお気に入りの経済政策なんか、どんなに願ったって消えるはずがないんだ」
「・・・」
「バスジャックなんてひどく古典的だが、これしか方法がないのさ。息子の命と引き換えに、差別撤廃条約のサイン。こうでもしないと、死んでった仲間や家族が浮かばれない。俺らは一生日陰者として生きていくつもりなんかない！」
ヨシヒコの熱く燃えた叫び声がバスの中に響き渡った。金髪に青や緑色をした眼をもつ人々はみな、怯えたような、または蔑んだような表情でヨシヒコを見つめている。
「・・・お前、ばかだろ」
コウイチのひどくかすれた声がした。項垂れたコウイチは、長い前髪の隙間から苦しそうな表情でヨシヒコを見た。
「言ったろ。俺が大統領になるまで待ってろって。俺が大統領になったら国を変えてみせるって」
「そんなのガキの時の口約束だろ。誰がそんなの信じるんだよ」
「本気に決まってるだろ。ずっと言い続けてきたじゃないか」
「そんなのどうやって信じるんだよ！俺はお前の家のドレイだったんだぞ！」
その瞬間コウイチは、ビー玉のように美しい眼から大粒の涙をぼたぼたと零した。その姿に一瞬ひるんだヨシヒコは、震え出したコウイチの様子をただ見つめることしかできない。
「・・・お前はばかだ。大馬鹿者だ。黙って待ってりゃ、僕は次の選挙に出馬できた。当選すればお前や仲間は自由になれたんだ」
「な・・・」
「何でこんなことしたんだよ。これじゃあお前、まるで無駄に・・・」
コウイチはそう言うと、頭を垂れて泣き始めた。ヨシヒコは笑い、「馬鹿なのはお前だろ」と低く響く声で言い放った。
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
