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俺はリエの腕を取った。
鼻血を出すリエが、ぼさぼさの頭で俺を睨みつけた。
「おいおいあんた、何だよ？」
青年グループが俺を睨みつける。俺はペンシーにいた時に身につけた"笑顔"を顔面に貼り付けて、興奮した青年たちに話しかけた。
「このカフェがユダヤ人禁制だと知らなかったんだ。僕がこの子を誘った。もう帰るから勘弁してやってくれよ」
「はあ？ユダヤ人なんかと付き合うなんて、お前も異端だな？」
「あいにく無宗教でね。神はいるかもしれないが、崇高することはない。俺は自分の目で見たものだけしか信じないんだ」
青年たちは絵に書いたように目を丸くして、「こいつ、狂ってるぜ」とぽつりと呟いた。確かに、キリストを信じることが当たり前とされているこの世界で、ユダヤの神を信じたり、どの神も信じない俺は異端だ。バックパックの女の子たちも、訝しげに俺を見つめている。
「とにかくもう出るよ。悪かったね」
俺はリエの手を握ったままカフェを出た。背後から罵声と酒をかけられた。リエはふらふら歩いていたが、ブルー・アベニューを出るとめそめそと泣き始めた。
「家はどっち？送っていくよ」
「・・・あなたのホテルに行きたい」
俺は時計を見た。もうそろそろ部屋に娼婦が来る時間だったが、今の気分的にはリエの方を抱きたかった。
「いいけど、娼婦を買ってあるんだ。二人いっぺんにということになるけど、それでもいい？」
リエははたりと立ち止まった。きょとんとする俺の右頬をパチンと叩き、「最低」と言うとヒールの高い編み上げブーツを鳴らして深夜の四番街を歩いて行った。
「また今度店に行くよ」
去っていく背中に声をかけたが、リエが足を止めることはなかった。
ホテルの部屋に戻ると、しわくちゃのベッドに見たことのない女が座っていた。真っ白の長い髪が、電気の付いていない部屋の中で窓からもれる月明かりに照らされ、妖艶に光っていた。
「あら、あなたがマスター？古風な名前だしオジサンかと思ってた」
「褒め言葉だと受け取るよ」
娼婦のアリスはほどよく痩せていて化粧がひどく濃かった。一昔前に流行ったネグリジェの紐をときながら、「何分コースだったかしら？」と高い声で聞いた。
「悪いけど、今は全然気分じゃないんだ。金は払うからさ、ちょっと宗教について話さないか？」
「・・・は？」
アリスは胸をあらわにしたまま眉をひそめた。
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
