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「なんで辞めたの？」
俺はモスコミュールのライムを絞りながらそう聞いた。ダンス・ミュージックは鳴り続ける。カフェは盛った男女で溢れかえっている。
「なんか、あたしたちさっきから同じ質問してない？つまんないからやめましょ、これ」
リエはそう言うとピーチフィズのグラスを持ち上げる。俺はテキーラのショットを3本の指で持ち、「賛成」と言いながらグラスをぶつけた。キンという明るい音が響いた。
「今の、何に乾杯？」
「出会いっていうと有りがちだから、そうだなあ、"人生やり直し"の成功を願って、とか」
「フフ、変なの」
「あ、旅人さーんこっちこっち」
ダンスフロアの方から、派手な女の子たちが俺に向かって手を振っている。一瞬誰だかわからなかったが、すぐにホテルのロビーで出会ったバックパックの女の子たちだと気がついた。
「呼ばれてるわよ」
「ああ」
「こっちについてまだ半日しか経ってないのに、もう一緒に踊る女の子が三人もいるの」
「たまたまね」
「あなた、見た目も派手だけど、結構不良の域でしょう。プレップスクールなんか通ってたくせに」
「だから放校になんかになったのさ。すぐ戻るよ」
リエの肩に手を置き、俺はバーカウンターから去った。リエはくるりとそっぽを向き、隣にいた青年のグループと話を始めた。
「ヘイ、楽しんでるかい」
「ええとっても。早く一緒に踊りましょうよ。このミュージックイカしてない？賛美歌22番をジャン=リーオンがカバーした曲よ」
「ああ、ほんとだ。耳に馴染むと思ったよ」
「あたしはナンシー。こっちはユイとナナ」
「俺はマサキ。よろしく」
腐ったダンスナンバーで腰を振る若者たちに交えて俺は脳を溶かした。俺は自分の矛盾に耐えられなかった。嫌なことは放っておいて、頭をからにしたかった。何も考えていないやつらの中に混じるのは気持ちがよかった。何も考えていないくせに、神だけは信じる弱い脳を、高みから笑うのは最高だ。
そのうち俺たちはカウチに座って大麻を吸った。知らない男と女も集まってきて、皆で踊り叫んだ。
「ファックアップ、ジュー！」
すると突然、グラスが割れる音と汚い叫び声がカフェ中に響いた。踊っていた若者たちは、期待をした目で振り返る。俺は目を疑った。先程の青年グループが、地べたに座り込んだリエを蹴飛ばして叫んでいる。
「この異教徒が！」
「さっさと帰れ！」
カフェはコロッセオの如く熱狂した。
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
