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ああ、そうか、ニューヨークは空襲がなかったんだ。
あまりに綺麗な街に疑問をもった俺は、ようやく真理にたどり着いた。そしてニューヨークに生きる人々を心底羨んだ。きみたちはここで生まれて、本当に幸せだ。きみたちは大切な家族を失うことがなかったのだから。
今でも目を閉じれば、大砲の音が聞こえる。飛行機の音、家が燃える音、命が消える音ーー
元々実家のあったシカゴの大部分がニューメキシコ義勇軍からの空襲で焼かれたのは、今から7年前の夏だった。その大空襲は俺たちの住んでいた街をも焼き尽くし、親父の工場も、家も、学校も、すべてが消えて無くなった。残ったのは灰色のがれきと無数の死体だけだった。
『ゴウ。星が降ってるよ』
血まみれのケンが瓦礫の下からそう言った。
「ケン！動くなよ。今これ全部動かしてやるから」
『凄いたくさん。街をどんどん壊してる・・・』
「ケン、喋るな」
虚ろなケンのまなざしは、どこか遠くを見つめていた。その綺麗な栗色の瞳は俺の姿を映さなかった。ケンの両腕は膨れ上がり、腰から下は爆風で吹き飛ばされていた。血色の瓦礫に横たわるケンは、何度も同じことを俺に伝えた。
『街が壊れてく。星が降るから困る。星が街を壊してく・・・』
「ケン。すぐナガノくん呼んでくるから。待ってろよ。足見つけて、くっつけてもらおう、な」
『わかった。星にきをつけてね』
俺は灰色の街を駆け抜けた。弟の足を探し出し、街外れのアパートに住むナガノくんをたずねる。泣いている俺に、ナガノくんは少し驚いていた。それから配給スープと消毒液を持ち、焼け崩れた家に戻った。
「ケン、ナガノくん来たよ。足もあった。すぐくっつけるから。痛いけど泣くなよ。なんか言えよ、なあ」
揺すっても叩いても、ケンが目を開けることはもうなかった。瞳と同じ色の髪が、砂の混じった風に吹かれた。
「おい、ケン」
肩を揺らすと、腰の断面から血がどっと溢れた。ケンの白い肌がどんどん青くなってゆき、細胞が固まり始めた。
「ケン！！」
俺はただ叫び続けた。頭の中がからっぽになり、何も考えることが出来なかった。
「ゴウ、ごめんね。俺ももう、なにもできない・・・」
ナガノくんは小さな声でそう言った。何百年も生きているせいで、ナガノくんはこんな戦争をもう何度も見てきたのだ。
俺はその後すぐ街を出た。そのあとで親父と愛人に子供が生まれ、その子はオカダと名付けられた。
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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい！サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (
レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます！トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます！ (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を！個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まお | 作成日時：2018年4月4日 7時
